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  • 2020/09/11

投資の神様バフェットは、なぜ日本の商社株を“まとめ買い”したのか?

著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社株(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)を購入したことで、資本市場に激震が走っている。その理由は、これまでバフェット氏はかたくなに日本株には投資しないことで知られていたからである。バフェット氏の投資行動は、グローバルな株式市場の動きそのものと言って良く、従来方針を180度変えたということは、市場が大きな転換点を迎えていることを示唆している。

経済評論家 加谷珪一

経済評論家 加谷珪一

加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

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これまで、かたくなに日本株には投資しないことで知られていた著名投資家ウォーレン・バフェット氏。日本の5大商社株を購入した理由とは
(Photo/AP/アフロ)
 

これまで日本株には決して投資しなかった理由

 バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが、伊藤忠商事や三菱商事など日本の5大商社の株式を購入したことが明らかとなった。バフェット氏は声明も出しており、「日本と5社の未来に参画できることをうれしく思う」と述べている。

 各国の資本市場関係者はこのニュースを大きな驚きを持って受け止めたはずだ。なぜなら、バフェット氏は、日本株には絶対に投資しない投資家だったからである。

 日本株に投資しない理由について明確にはしていなかったが、バフェット氏は常々、「分からないものには投資しない」と語っており、日本の株式市場や商慣行の不透明性が障壁となっていた可能性が高い。一貫したポリシーで投資を続け、卓越した成果を上げてきた投資家が、これまで絶対に投資しなかった市場に手を出したということは、大きな方針転換があったと解釈せざるを得ない。では、バフェット氏はなぜ、このタイミングで投資戦略を大きく変えたのだろうか。

 先ほど「分からないものには投資しない」という話を引き合いに出したが、分かりにくさという意味では、商社はその典型だったと言って良い。

 そもそも、あらゆる商品を扱う総合商社という業態は日本(もしくはアジアなどの一部の新興国)にしか存在しないものである。メーカーが製品を販売したいのであれば、各地域のディストリビューターに製品を直接出荷すれば良く、わざわざ間に商社を仲介させるという形態は非合理的と映る。海外の製品を輸入したり、海外と合弁事業を行う場合も同様で、各企業が直接、相手とやり取りすれば良い。

 もっとも日本の場合、戦後の混乱を経て経済を急成長させたこともあり、欧米のような洗練された商慣行を構築する余裕がなかったという事情もあるだろう。実際、日本が豊かになった1980年代以降、国内でも商社不要論が台頭し、合理的な商習慣の確立が必要との議論も活発になった。

 こうした中で商社が選択したのは、資源ビジネスへの注力と投資事業の強化である。1990年代以降、商社の業態は大きく変わり、世界各国の資源に投資し、そこから収益を得るスタイルにシフトした。たとえば、三井物産が獲得している利益全体うち、すでに6割以上が資源・エネルギー関連である。

 各社ごとに細かい違いはあるが、資源ビジネスの比率を高めたことは共通の動きと言って良い。近年における日本の総合商社は、諸外国から見れば完全に資源・エネルギー企業となっており、分かりにくいというイメージは徐々に払拭されつつある。

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「分からないものには投資しない」と語っていたバフェット氏。分かりにくさで言えば、商社はその典型”だった”が、なぜ投資に踏み切ったのだろうか
(Photo/Getty Images)
 

なぜ日本株という決断をしたか

 日本の商社は、事実上、資源・エネルギー企業になっているというこの現実こそが、今回のバフェット氏の決断と密接に関係しているはずだ。個別の企業ではなく、商社という業界全体が欲しかったことは、株の買い方にも顕著に表われている。

 今回、バフェット氏は、時価総額がバラバラであるにもかかわらず、5大商社すべてに同じ比率(約5%)で投資を行った。個々の企業については細かく評価していないということであり、これは商社セクター全体への投資と判断できる。では、なぜバフェット氏は、このタイミングで投資を決断したのだろうか。これにはコロナ危機が大きく影響した可能性が高い。

 コロナ危機によって世界の株価は大きく値下がりしたが、米国の株式市場は急ピッチで回復が進んでいる。だが、株価が元に戻ったといってもその中身は大きく様変わりした。いま、株価の上昇を支えているのは、アップルやマイクロソフトといったIT企業である。

 これは、ポスト・コロナ社会において企業のデジタル化が不可欠という将来期待を反映したものだが、一方で、コロナが完全に終息するまで消費者心理は萎縮し、「巣ごもり」による景気低迷が続くという見立ての裏返しでもある。しかもIT企業は、コロナ前からかなりの高値となっており、いまの相場は、上がり切った銘柄の高値をさらに追うという、一種のチキンレースとなっている。

 バフェット氏は、割安な安定銘柄に長期投資する手法であり、短期の利ざやを稼ぐ投資家ではない。いまの局面においてバフェット氏が買える銘柄は極端に少なくなっており、投資する先がないというのがおそらくホンネと思われる。その結果として、これまで不透明性リスクから手を出していなかった日本株にも手を出したということだろう。

 数ある日本株の中で商社が選択されたのもコロナ危機と密接に関係している。



 各国は今回のコロナ危機に対応するため、国債を増発して大規模な財政支出を行っている。この政策は当分、続くので、各国の財政が悪化するのは確実視されている。財政が悪化すると、金利上昇とインフレを招きやすくなるのはマクロ経済学の常識であり、当然、世界の投資家はインフレを警戒している。

【次ページ】商社株を選んだ本当の理由とは

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