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  • 2021/03/10 掲載

保険商品開発のポイント、どう決める?「価格」「マーケット」「販売チャネル」

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近年、生保保険・損害保険各社は、消費者のライフスタイルの多様化に対応するため、あらゆる保険商品の開発を進めてきたが、商品の種類の増加や発売サイクルの短期化という傾向が強くなり、開発競争が激化している状況にあります。今後、新規参入するプレイヤーが増えることも予想される中、「いかに優れた保険商品を開発できるかが、保険各社の勝敗を分けるポイントになるかもしれません」と語るのは、スイスに本社を置く保険大手のチューリッヒ生命 チーフ・マーケティング・プロポジション・オフィサーの野口俊哉氏だ。野口氏に「保険商品の開発のポイント」を聞いた。
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チューリッヒ生命
チーフ・マーケティング・プロポジション・オフィサー
野口俊哉氏

生保・損保業界の現状

 生保・損保ともに、保険を引き受けるとともに、顧客から集めた保険料をもとに資産運用をするため、低金利が続く現在の環境は、業界全体として厳しい状況と言えます。

 こうした中、生保業界では、十数年前に外国の金利に基づいた高い予定利率が魅力的な外貨建ての保険商品を販売しはじめ、これが流行しましたが、その商品内容の複雑さと募集時の説明不十分ゆえに、後々購入者からの苦情が殺到し、現在では売りにくい商品となってしまいました。

 損保業界では、ここ数年台風や大雪、豪雨などが多発していることもあり、顧客への多額の保険金支払いが異常危険準備金の残高を減少させています。一方で、自動車保険は、自動車の安全技術の発達と、足元の外出自粛の影響で交通事故が減少しており、保険金支払い額は抑えられ、収益が安定している現状が続いています。

 このように外部環境に大きく左右される保険業界にとって、いかに環境変化に合わせた保険商品を開発できるかが、事業の存続を左右するほど重要なのです。

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今後は、保険商品の開発力が、保険各社の勝敗の分かれ目になるかもしれない……
(Photo/Getty Images)
 

保険商品開発のポイント

 実際に保険商品を作る際、どのような点がポイントになるのでしょうか。

 新しい商品を作るきっかけとなるのは消費者のニーズです。消費者のライフスタイルの変化を察知し、そこからどのような保険ニーズがあるかを想像して商品開発を進めます。

 商品開発には時間がかかるため、世に出たときには時代遅れな商品になっている可能性もあります。したがって、将来の社会環境がどう変化するかを予測して開発することがポイントになります。たとえば、認知症保険が登場した背景にも認知症が社会問題になるだろうとの保険業界各社の予測がありました。

 そのほかにも、保険商品の開発において検討すべき項目は多岐にわたります。たとえば、消費者にとって買いやすく企業として売上を出せるラインを見極めながら保険商品の価格設定をする必要があるほか、自社のシステムによっては、そもそも作れない保障内容の商品もありますので、自社が採用しているシステムとの相性も考慮する必要があります。さらに監督当局である金融庁の認可を取る必要があるなど、保険商品の開発には、お金・手間・技術・知識が必要になるのです。

 保険商品の開発において、特に考えなければならないのは「どのマーケットを取りにいくのか」ということです。個人なのか、団体なのか、高齢者なのか、若年層なのか。マーケットが決まることによって、開発すべき保険商品の方向性が見えてきます。マーケットを読み違えると「商品自体は良いのに売れない」「実績支払率が想定よりも高くなる」などの失敗につながりかねません。

商品開発時の留意点、「逆選択リスク」とは

 保険商品を開発する人間がたえず意識しておくべきことの1つは「逆選択リスク」です。

 「逆選択リスク」とは「ニーズを強く感じているリスクの高い人ばかりが加入すること」です。保険会社にとってはターゲット層にくまなく売れるのは良いことなのですが、リスクの発生確率の高い人ばかりが購入することになれば、保険会社として保険金の支払いが増え、収益をあげるのが難しくなります。

 たとえば、不妊治療保険を作って個人向けに発売したとします。しかし、商品内容を工夫しなければ、不妊治療保険は不妊治療を受けようとしている人しか購入しないため、実績支払率が圧倒的に悪くなることが予想されます。自らが選んで入れる商品で、なおかつリスクの高い人しか加入しない商品を作ってしまうと、実績支払率が何百パーセントという極めて悪い水準になる可能性すらあります。

 仮に不妊治療の保険を含んだ商品であっても、不妊治療に関わりのない人も含めて広く販売する商品として開発すれば、逆選択リスクが起きにくくなります。他にも、「不妊治療保険金を請求しなかった人に無事故給付金を支払う」という条件を付けることで、不妊治療の必要のない人の不利益を相殺し、逆選択リスクを回避することが可能です。

 プライシング(価格設定)も慎重に行わなければなりません。医療保険のようにすでにたくさんの商品が世に出ている場合、後出しで同じ保障内容であるにもかかわらず高価格だったら誰も見向きもしないでしょう。同系統の商品を出すのであれば、競争力のある商品を作る必要があります。



 保険は原価が後で確定する特殊な商品です。楽観的な前提条件でプライシングすると実績収益率が悪化し、売れば売るほど収益がマイナスという状況もあり得ます。よって収益性を計算する場合には、保守的な前提条件を立てる必要があるのです。競争に勝ちたい気持ちから楽観的な前提に流れがちなので、ここは戒めなければなりません。

 もう1つ意識すべきなのは、お客さまに分かりやすい商品を作ることです。販売チャネル(経路)によっても商品内容は変わります。ライフプランナーが対面で時間をかけて説明するのであれば、複雑な商品でも対応できるでしょう。銀行で売るのだとすれば、多少はシンプルな商品を販売する必要があります。ネット販売の場合はお客さまが自分で選択して加入するものなので、きわめてシンプルな商品にしなければなりません。

【次ページ】話題の健康増進型保険の特徴、現状と将来性

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