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  • 2021/11/17 掲載

1時間で1.7億円を売り上げる、オートミールをバズらせた創業者の合理的すぎる戦略

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前編では、中国のビジネスシーンにおけるジェンダー格差の実状をレポートした。各種調査のデータから女性の出世ハードルが視覚的にも示される中、企業での出世に見切りをつけ、起業をして成功する女性が増えている。その1人で、中国を代表する女性起業家である姚婧(ヤオ・ジン)氏は、健康食品の会社「王飽飽」(ワンバオバオ)を創業した。同社は、アリババが主催する世界最大のECセール「独身の日」では1時間で約1.7億円を売り上げるなどの成功を収めている。この輝かしい実績を導いた裏側には、消費者目線の商品企画とマーケティング手法があった。

執筆:ITジャーナリスト 牧野 武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野 武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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創業者らはどのような戦略を編み出したのか?(写真はイメージです)
(Photo/Getty Images)


中国を代表する女性起業家はどう成功した?

 「王飽飽」(ワンバオバオ)の創業者、姚婧(ヤオ・ジン)氏は、会社での出世を見限り、起業して成功した女性起業家の1人だ。

 オートミール健康食品「王飽飽」を主力商品とし、2019年の11月11日のEC「天猫」(Tmall)独身の日セールではわずか1時間で1,000万元(約1.7億円)を売り上げ、総合売上でもシリアル食品部門の1位となった。その売れ行きだけでなく、商品開発やマーケティングが今までにないもので、手法にも注目が集まり、メディアが女性起業家の特集を組むと、必ずと言っていいほど登場する起業家だ。フォーブズ中国の「2021Forbes China Up-and-Coming Businesswomen List」20名にも選ばれている。

 王飽飽が注目されている理由は、売上面の成功だけではなく、その手法だ。SNSを駆使して、消費者のニーズを先に把握し、それから商品を企画するという普通とは逆ルートで起業をした。

 創業者のヤオ・ジン氏は、大手通信会社に10年間勤務したが、企業の中で生きていくことに限界を感じ、輸入化粧品の代理購入ビジネスを始め成功をしていた。単に安く販売をするだけでなく、自身でも美容関係の知識をSNSで披露するなどして、人気の網紅(ワンホン=インフルエンサー)となっていた。


ファンをつくって、ファンが欲しいものを売る

 次のビジネスを手がけたいと思うようになり、友人の何亜渓(フー・ヤーシー)氏に相談をした。中国移動に勤める傍ら、美容とグルメの情報発信をし、彼女自身も網紅として活躍をしていた女性だ。

 彼女に「どんな商品を売ったらいいと思う?」と尋ねると、フー・ヤーシー氏は「売る商品を決めるよりも、私たちのファンをつくることの方が重要だ」と主張する。先にファンをつくり、そのファンが欲しいものを売ればいいのだと言う。

 そこで2人は、アリババで消費者の行動分析をしているアナリストの徐丹青(シュー・タンチン)氏を仲間に加え、ヤオ・ジン氏の化粧品関連のファン、フー・ヤーシー氏の美容とグルメのファンの発言を、シュー・タンチン氏の手法で分析するところから始めた。顧客は必然的に若い女性が多くなる。


 そこから見えてきたのが、「食べることが大好き」「食べると太るのが怖い」という矛盾した感情だった。ファンの発言の中で、最も大きな矛盾だと感じ、この矛盾を解決できる商品=食べても太らない健康食品があれば売れると考えた。そこで着目したのがオートミールだった。オートミールは燕麦(オート麦)を使ったシリアル食品で、栄養バランスがいいのに低糖質であり太る心配がない。しかし、最大の欠点はおいしくないことだった。食べすぎると胸焼けがする。

 そこで、協力してくれる食品製造企業を探し、3人は工場に通い詰め、さまざまな方法を試した。その試行錯誤から低温焙煎処理にたどり着く。要は、軽く焙煎をする処理だ。これで香ばしく口当たりがよくなり、牛乳やヨーグルトに浸さずそのまま食べてもスナックとして楽しめる。さらに、オートミールにドライフルーツなどをミックスした。これで味と栄養バランスがよくなり、さらに見た目もよくなる「映える」食品となった。

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王飽飽はオートミールにドライフルーツなどを合わせた「おいしいけど太らない」シリアル食品
(出典:淘宝網王飽飽旗艦店)

 しかし、製造が大きな問題になった。3人が計画している規模の生産量では、大手食品企業では規模が小さすぎて受けてもらえない。小さな食品工場を探すと、今度は品質と納期が合わない。

 だったらと、3人は自分たちで工場をつくることにした。浙江省杭州市臨安区に手頃な物件を見つけ、そこに食品製造設備を入れた。しかし、最も重要な食品安全検査の専門家を雇う資金的な余裕はなく、誰もいない工場で、食品安全法を3人で勉強する日が1カ月も続いたという。

【次ページ】インフルエンサーマーケティングの草分けに

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