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  • 2022/05/18 掲載

Web3、メタバースと金融業界はどこで交わるのか? その論点とは

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2021年来、Web3関連で最も注目を集めているキーワードの1つが「メタバース(仮想空間)」である。一体、メタバースの何がそんなに凄いのか? また、金融業界とメタバースはどのような関わりを持つことになるのか? 本稿では、「金融業界×メタバース」について掘り下げる。金融業界のデジタルトランスフォーメーションを業務として担う筆者の視点を紹介する。

執筆:日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

執筆:日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人
IBMにてメガバンクの基幹系開発、インターネットバンキング黎明期のプロジェクト立上げ、金融機関向けコンサルティング業務に従事。その後、マイクロソフトを経て、三菱UFJフィナンシャル・グループのイノベーション事業に参画し、フィンテック導入のオープンイノベーションを担当。「Fintech Challenge 2015」「MUFG Digitalアクセラレータ」「オープンAPI」などの設立を主導。また、MUFGコインなどブロックチェーン等の新規事業などの立上げも手がける。auフィナンシャルホールディングス 執行役員 最高デジタル責任者を歴任し金融スーパーアプリなどに携わる。現在は日本マイクロソフトにて、フィンテックを活用したデジタル金融サービスの創造に取り組んでいる。

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Web3、メタバースと金融業界はどこで交わるのか?
(Photo/Getty Images)

Web3の潮流

 昨今、“Web3”と、それを構成する要素であるメタバース(仮想空間)分散型金融(DeFi)分散自律型組織(DAO)NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)など、ブロックチェーンをベースとする新たなテクノロジートレンドのキーワードをあちこちで目にするようになってきました。

 「Web3とは何か」という問いについては、世の中に数多くの解説記事が存在しますのでそちらを参照いただくことで理解が深まると思いますが、ethereum.org にある解説によると、「Web3は、大企業に独占されたインターネットではなく、分散化を受け入れ、ユーザーによって構築、運営、所有されているため、企業ではなく、個人の手に力を与えるもの」とされています。

 インターネットは、Web1(グローバルでオープンに情報共有可能な分散型プロトコル)、Web2(一握りのトップ企業がウェブ上のコンテンツを独占する収益モデル)と変遷を経てきました。Web3は、「その一握りの中央集権的な組織がインターネットの広い範囲で支配的にふるまっている現状に対するアンチテーゼ」だというのです。

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Web1.0、Web2.0、Web3の違い
(出典:Citi Global Insights)

 そして2021年来、Web3関連で最も注目を集めているキーワードの1つが前述の「メタバース」です。筆者は金融業界のデジタルトランスフォーメーションを推進する仕事をしていますが、金融業界においてもメタバースに対する注目度が非常に高まってきていると感じています。

 一体、メタバースの何がそんなに凄いのでしょうか? また、金融業界とメタバースはどのような関わりを持つことになるのでしょうか?本稿では、多くの人が関心を持つであろう「金融業界×メタバース」について少し掘り下げてみたいと思います。

メタバースの定義が困難な理由

 実際のところ、コンセプトとしてのメタバースは2000年代以前から存在したと言われています。そして、2003年には、リンデンラボがSecond Life(セカンドライフ)というインターネット上の仮想世界アプリを開始し、世界中で一大ブームを巻き起こしました。

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図:セカンドライフ
(出典:Wikipedia セカンドライフでnアバターの交流 CC BY-SA 3.0)

 セカンドライフのヒットを受けて、類似の仮想世界が次々と生まれましたが、ほどなくブームは沈静化し、その後しばらく仮想世界がトレンドになることはありませんでした。しかし、2021年末に、メタバースに関連するNFTの売り上げが上昇し、またビッグテック企業がメタバースへの関心と大きな投資予定を示す発表を行ったことを受けて、仮想世界に対する関心が再び急増しました。

 米モルガン・スタンレーによると、メタバースの将来市場規模(通信インフラへの投資なども含む)は2024年に8兆ドル以上になるとも予測されています。まずはSNS、エンターテインメント、ゲームなどの分野で市場が拡大し、やがてエンタープライズ向けの市場においても需要が開拓されていくということです。

 メタバースを定義することは簡単ではありません。メタバースはバズワード化しており、多くの企業がマーケティング目的で、3D技術を使う自社の仮想空間サービスをメタバースの一種(3Dの仮想空間=メタバース)と説明するケースが多く、メタバースという言葉が示す内容が曖昧(あいまい)であるのが現状です。

 現世代のメタバースとセカンドライフとの違いは何でしょうか? 1つ挙げられるのは、「没入型のマルチプレイヤー体験が可能な空間である」点にあると考えられます。民生用のVRデバイスを用いて、あたかも隣に人がいるような感覚でコミュニケーションが取るユーザー体験は、セカンドライフの時代にはないものでした。

 しかしながら、エクストラデバイスが必須のサービスが広くあまねく普及すると考えるのは無理があります。今後、メタバースは、デバイスに依存しない形で3Dやリアルタイム、没入型のコンテンツを配信するものとして進化していくでしょう。没入感の演出には、より高精細な映像や、PCのカメラによるアイトラッキング技術などが活用されていくのではないでしょうか。

 もう1つの大きな違いとして、Web3との関連性があります。今日では、たとえばFortniteやマインクラフトなどの中央集権的に運営されるゲームがメタバースの代表格として語られることもありますが、筆者の理解では、メタバースはブロックチェーン上に構築されたオープンかつ自己主権型の仕組みで運用され、またNFTやガバナンストークンが流通する「現実世界の延長としての新しい経済モデル」としての評価・期待値の高まりにより、注目されていると考えています。

 暗号資産やNFT、ステーブルコインを含むDeFiトークンといったいわゆるデジタル資産がメタバース内の“実資産”と紐付くことで、メタバース内の経済活動やお金の流れは必然的にdecentralized(非中央集権化)されます。この運営形態はDAO(分散型自律組織)とも呼ばれます。そして中央集権型のメタバースとの対比として、これらのメタバースは“オープン・メタバース”とも呼ばれます。

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図:Decentraland
(出典:WikipediaCC BY-SA 4.0

 オープン・メタバース間では、デジタル資産の移動などが可能となる互換性も確保され、デジタル資産の価値はさらに高まります。今後、おそらく多くのWeb3プロジェクトはメタバース内に進出していくでしょう。

【次ページ】メタバースが金融業界に与える影響とは?

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