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- 2022/08/31 掲載
もしDeFiが止まったら、金融庁はどこに立入検査をするのか?
「分散」は規制逃れの口実か
「DeFiという言葉自体が必ずしも正確ではない」……6月に金融庁で開かれた研究会では出席した有識者からこんな声が上がりました。「分散は分散であっても、非中央集権的ではまったくないという仕組みが多く見られる。あたかも分散型自律組織(DAO)であるかのように振る舞うことにより、規制の対象から逃れようとしているという感じが強くする」そもそもDeFiとは何か、そしてどこを目指しているのか。「脱-中央集権」という点に着目して改めて確認します。
たとえば一般的な金融システムでは、ある人が銀行の口座に預けているお金を別の口座へと送金する場合、店舗やホームページで振り込みの手続きをすると、全銀システムなどを経由してお金が別口座へと移動することになります。お金を振り込む人と受け取る人との間で、全銀システムといういわば中央集権的要素が橋渡し役を担っているわけです。
これに対し、ブロックチェーン技術を活用するDeFiは、全銀システムのような中央機関の介在を必要とすることなく、ユーザー同士の直接的な取引(P2P取引)を実現できると期待されています(DAOはDeFiを含むより広い概念で、金融に限らずさまざまな分野において、ブロックチェーンを活用し中央集権的要素を排する組織の総称です)。
ただし現在、DeFiプロジェクトがすなわち脱-中央集権であるという前提は揺らいでいます。20年には、代表的なプロジェクトの1つ、MakerDAOへのゼロ入札攻撃事件で損害を被った投資家たちが関連組織を集団提訴しました。
他のプロジェクトでも近年、同様のトラブルが相次ぎ、DeFiプロジェクトにおいてどこに権限が集中しているか、事故発生時の責任をだれが負うべきかという議論が世界中で加速しました。
DAOにせよDeFiにせよ、「脱-中央集権」はあくまで個々のプロジェクトが掲げる理念に過ぎず、実際に中央集権的な要素をまったく含まないプロジェクトなど存在しないのでは──先の有識者の発言の背後には、一連の事件やトラブルを踏まえたこうした懐疑論があります。
【次ページ】問題の核心を回避しながら規制の議論を前進させる
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