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  • 2025/06/05 掲載

JRでも…儲からない「赤字路線」はどこ?長野・鳥取・広島・山口の崖っぷちすぎる惨状

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人手不足、財源不足などで消滅の危機に追いやられていくローカル線を救うために、全国29都府県の知事が連携し、「全国的な鉄道ネットワークのあり方に関する特別要望」を政府に提出しました。国、自治体、JRの各プレーヤーは、地域の生活に密着した交通網を守るために、それぞれどのように責任と役割を担っていくべきなのか。国交省主導の有識者会議の内容も交えながら、“赤字ローカル線問題”の論点を整理します。
執筆:小達 紀治   編集:ジャーナリスト 川辺 和将

ジャーナリスト 川辺 和将

元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」

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図1:地域鉄道の利用者はコロナ後も回復せず……
(出典:国交省「地域鉄道の現状」を基に編集部作成)

数字で見ると一目瞭然…「ヤバすぎる」地域鉄道の現実

 「鉄道が消滅の危機にある」という話題を耳にする機会は増えていますが、実際にその“危機”はどれくらい差し迫っているのでしょうか。地域鉄道の窮状はデータを見ると一目瞭然です。

 国土交通省鉄道局の調べでは、地域鉄道の輸送人員はピーク時の1991年度から、コロナ禍前の2019年度にかけて約22%減少しました。そして2023年度は、2019度比で約11%減少しています(図1)。自粛ムードから明けてもなお、回復していない状況がうかがえます。

 旅客数とともに、利益も減少しています。地域鉄道事業者の経常収支は、2019年度が赤字78%、黒字22%だったのに対して、2023度は赤字83%、黒字17%の比率となりました(図2)。

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図2:地域鉄道事業者の経常収支
(出典:国交省「地域鉄道の現状」を基に編集部作成)

「8割が赤字」車両も社員も限界、抜け出せない悪循環

 設備の老朽化も深刻な問題です。内燃車(いわゆるディーゼル車、気動車)の耐用年数は11年、電車は13年ですが、実際の車齢(車両の年齢)は2023度末で、1~10年が12%、11~13年が4%、14~20年が9%、21~30年が19%、31~50年が31%、51年以上が25%という結果に(図3)。8割以上が耐用年数を超えていることになります。

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図3:8割以上の車両が耐用年数を超えている
(出典:国交省「地域鉄道の現状」を基に編集部作成)


 運転や設備の維持・管理にあたる人材も減少の一途をたどっています。鉄軌道部門の社員数は、昭和末期から平成初期は1万人近くいましたが、2023年度には6000人台に。1987年度から実に3割近く減少している計算になります。

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図4:運転手含む人材不足も深刻
(出典:国交省「地域鉄道の現状」を基に編集部作成)


 乗客の減少、設備の老朽化、そして人材不足の「三重苦」によって、地域鉄道は窮地に立たされています。運賃収入が得られないために新車両やトンネル、橋などの更新ができず、採用活動も十分にできないといった悪循環に陥っているのです。

 地域鉄道事業者は、2025年4月1日現在で全国に100社近く。しかし先ほども触れたように、そのうち8割近くの事業者が赤字になっています。もちろん、沿線住民の生活やコミュニティ維持に不可欠の路線も多く、「お金にならないから即廃止」とするわけにはいきません。 【次ページ】29道府県が政府に「特別要望」、その4つの内容とは
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