- 2025/12/23 掲載
PayPayあるのに…なぜ、Suicaに“QR決済”? JR東に「teppay」が必要だった本当の理由
連載:小林拓矢の鉄道トレンド最前線
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。「東洋経済オンライン」「ITmedia」「マイナビニュース」などに執筆。Yahoo!ニュースエキスパート。単著に『京急 最新の凄い話』(KAWADE夢文庫)、『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)など。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)などがある。
そもそも「teppay」とは?
モバイルSuicaのコード決済サービス「teppay」が、2026年秋より提供開始されることが、JR東日本から発表された。同時に、2027年春には同機能がモバイルPASMOにも導入されることが示された。「teppay」は、そのネーミングや、利便性、ライバルの多さなど、発表されてからすぐさま多方面からその良し悪しが論じられた。多くの人の生活に根ざした「モバイル端末+交通系ICカード」が大きく変わるということで、「なぜ?」「どうなる?」といった関心が集まっているのだ。
あわせて、交通系ICカード自体も変わろうとしており、その動向も注目されている。これは便利なのか、何を意図して交通系にコード決済、ということを考えてみたい。
そもそも、「teppay」とはどんなものなのだろうか。一言で言えば、「今使っているSuica・PASMOアプリの中に、PayPayのような画面表示機能が追加される」ものだ。
0.2秒で「立ち止まらない決済」を実現してきたJR東日本
現在、東京圏(1都3県)の生活者におけるSuica・PASMO所有率は84.3%であり、モバイルSuicaの発行枚数は3500万枚に迫る。モバイルPASMOの発行枚数は公開されていないが500万枚を超えているだろう。もはや「生活インフラ」であり、私たちは改札でもコンビニでも、カードやスマホを「かざすだけ」の快感に慣れきっている。JR東日本もまた、改札を「0.2秒」で通過させるために技術を磨き上げ、私たちに「立ち止まらない便利さ」を提供してきたはずだった。
ところが、「teppay」は、Suicaアプリを開き、バーコードやQRコードを画面に出して店員に見せる。あの「PayPay」などで私たちがやっている操作を、タッチ決済が魅力であるはずのSuicaアプリの中でやらせようと言うのだ。
だが、teppayには他のアプリには絶対に真似できない、決定的な強みがある。
それは、「新しいアプリを入れる必要がない」という点だろう。すでにモバイルSuica・モバイルPASMOを使用している人は面倒な会員登録も、アプリのダウンロードも必要なく、現行のアプリで使用することができる。
あなたのスマートフォンにあるモバイルSuica・モバイルPASMOのアプリがアップデートされれば使用が可能になるものだ。開始時期は追ってお知らせがあるだろう。
では、なぜあえて「QRコード」なのか。その背景には、私たちがSuicaを使っていて、ふと感じる「あの不便」を解消できると同時に、JRが抱える「サービスを提供する側の事情」を私たちに受け入れさせるための巧みな解決策でもあった。 【次ページ】Suica・PASMOが抱える「致命的な弱点」を解消したteppay
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