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- 2026/04/27 掲載
ソフトバンクら「日の丸連合」が狙う“AI覇権”の逆転劇…GAFAMにない「最強の強み」
10兆円の「デジタル赤字」も…?日本が直面する“絶望的な現実”
2026年4月、ソフトバンク、NEC、ホンダ、ソニーグループなどが出資する新会社「日本AI基盤モデル開発」が設立されたと複数のメディアが報じた。報道によると、新会社は1兆パラメーター級モデルの開発を目指し、ロボットなどを動かす「フィジカルAI」への活用を視野に入れるという。
今回の発表で重要なのは、海外勢と同じように汎用チャットAIの人気を争う構図ではなく、製造、モビリティ、エンターテインメントなどの産業実装までを見据えている点である。モデル競争で正面突破しにいくのではなく、日本がまだ厚みを持つ産業領域にAIを深く埋め込む。
生成AIの覇権争いを、基盤モデルそのものの性能競争として眺める限り、日本勢の立ち位置は厳しい。スタンフォード大学の「AI Index 2025」によると、2024年に世界で「注目すべきAIモデル」を生み出した数は米国が40、中国が15、欧州が3だった。
量だけでなく、民間投資の厚みも大きい。同報告書では、2024年の米国の民間AI投資額は1,091億ドルと、中国の93億ドルを大きく上回った。最先端モデルの開発は、もはや研究力だけでなく、計算資源、データセンター、半導体、人材確保を束ねた総力戦になっている。日本企業が単独でこの土俵に上がるのは容易ではない。
経済産業省もこの現実を隠していない。産業政策の在り方などを検討する、同省の「産業構造審議会」における2024年の資料では、AI、計算資源、最先端半導体の市場で「海外プレーヤーが支配的」と明記し、デジタル投資の出遅れによって日本のデジタル赤字が2030年に約10兆円まで拡大する恐れがあるとした。
日本語に強いモデルをつくる、国内法制に対応しやすいといった利点は確かにある。だが、「国産であること」そのものが勝ち筋だった時代ではない。利用者が最終的に問うのは国籍ではなく、性能、コスト、導入のしやすさ、そして業務や機械をどこまで動かせるかだからだ。
「日の丸」連合が“フィジカルAI”に賭ける切実理由
フィジカルAIとは、カメラやロボットなどで物理世界を知覚し、動作するAIだ。大規模言語モデルが主にインターネット由来のテキストや画像を学び、人間の言語や抽象概念に強みを持つのに対し、フィジカルAIは空間認識、センサー入力、運動制御、物理法則への適応を要する。工場、倉庫、建設、交通の現場では、答えを返すだけでは価値になりにくい。ラインの停止を避けながら、対象物を認識し、動作を計画し、安全に実行するところまで到達して、初めて競争力になる。
だからこそ、1兆パラメーター競争の本丸はチャットではなく産業制御にある。経済産業省の資料も、AI、計算資源、最先端半導体を一体で整備しなければ、モビリティ、ものづくり、物流、金融などの国際競争力が中長期で劣後しかねないとする。
前述の経済産業省の資料でも、「設計段階からAI・半導体技術をどう活用するかを綿密に擦り合わせながら開発・生産する必要がある」という記述があることは象徴的だ。フィジカルAIは単なるソフトウェア開発ではなく、設備設計、センサー、通信、半導体、制御、安全認証までをまたぐ産業横断の仕事である。単独プレーヤーでは完結しにくい。
製造、通信、金融が同じ船に乗る理由もここにある。
報道ベースでは、新会社には4社に加えて3メガバンクや鉄鋼大手も参画する。基盤モデルの開発には巨額の資金が要り、実装段階では工場、自動車、ロボット、ゲーム、金融業務など多様な利用先が必要になる。
通信会社は計算基盤とネットワークを持ち、電機・IT企業はモデル開発と実装技術を持ち、自動車・製造業は現場と装置を持つ。金融は長期資金の供給と顧客基盤を持つ。
AIが答える段階から、AIが現実の装置を動かす段階に移るほど、参加企業の顔ぶれはむしろ重くなる。画面の中のAIではなく、社会インフラのAIを狙う以上、連合の意味は必然でもある。 【次ページ】GAFAMにはコピー不可能…?日本が活用すべき「最強の武器」
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