- 2026/05/18 掲載
【比較】トヨタ系部品5社“天国と地獄”、「ナフサショック」で勝ち残るのはどこか?
トヨタ大幅減益…次の懸念は「ナフサショック」
トヨタ自動車が直近発表した2026年3月期の決算は、売上高が日本企業初の50兆円超えとなった一方で、営業利益が大幅に減り、「増収減益」での着地となった。世界で販売台数を伸ばしても、原材料費や人件費などの上昇が利益を容赦なく押し下げている。原材料価格の高止まりに加え、深刻な人手不足を背景とした人件費の上昇、次世代モビリティに向けた先行投資としての開発費負担、そして不透明な為替動向や中国市場などでの競争激化が、完成車メーカーの収益を複合的に圧迫している。
この問題は、完成車メーカーだけにとどまるものではない。巨大なピラミッド構造を形成するサプライチェーンに連なり、日々の生産を支える部品メーカーの収益構造にも直結する。
数あるコスト上昇要因の中でも、中長期で見逃せないのが地政学リスクを背景とした資源価格の変動だ。とりわけ中東情勢の緊迫化は、原油価格を不安定にし、ひいてはナフサ(粗製ガソリン)の取引価格を押し上げている。
ナフサは石油化学製品の基礎原料で、プラスチック、合成ゴム、合成繊維、塗料、工業用接着剤など、クルマを構成するありとあらゆる素材の源流にナフサが存在している。そして、そのナフサの調達元は44.6%が中東であり、国産ナフサについても原料となる原油も中東に依存しているため、実質的な中東依存は約8割に上るとされている。
つまり中東情勢の緊張は、ガソリン価格の高騰だけでなく、自動車のシート、インパネ(計器盤)周辺の樹脂部品、バンパーをはじめとする外装材、エアバッグなどの安全部品、さらには電子部材を覆う保護ケースに至るまで、さまざまな部品の原価を押し上げているのだ。
直近の決算数値には、まだナフサ高の影響は現れていない。しかし今後、ナフサ価格の高騰は部品メーカーの利益を直接押し下げる要因になり得る。「ナフサショック」に対し、どの企業がうまく対応できるのか。各社の最新決算から見えた現在の「稼ぐ力」と事業構造を読み解くと、ナフサ高に強い会社とそうでない会社の輪郭が見えてくる。
トヨタ系部品メーカー5社を決算比較
トヨタ自動車の2026年3月期決算は、売上高50兆6,849億円(2025年3月期比5.5%増)という歴史的記録を達成した一方で、営業利益は3兆7,662億円(同21.5%減)と大幅な減益に沈んだ。米国の関税影響や各種コスト増が大きく響き、販売台数を伸ばすだけでは利益を守りきれない過酷な局面に入ったことを市場に知らしめた。この完成車メーカーの苦境は、サプライチェーンを支える主要部品5社の業績を見ても明確なコントラストを生み出している。各社が発表した2026年3月期決算を比較すると、コストが高騰する中での各社の「稼ぐ力」の差が鮮明だ。ここに、今後のナフサ高に対する防衛力の差が隠されている。
売上規模で見れば、デンソーが7兆5,400億円(5.3%増)、アイシン5兆1,177億円(4.5%増)、豊田自動織機4兆3,695億円(7.0%増)、トヨタ紡織2兆370億円(4.2%増)、豊田合成1兆1467億円(8.2%増)の順となる。
しかし、原価耐性の指標となる「営業利益率」で序列を並べ替えると景色は一変する。売上トップのデンソーが営業利益5,525億円で利益率7.3%を確保して首位に立つ一方、売上規模では最も低かった豊田合成が営業利益795億円をたたき出し、利益率6.9%とデンソーに肉薄する2位へと躍り出るのだ。
また、営業利益の増減を見ても明暗が分かれる。デンソーが2025年3月期比6.5%増、アイシンは同12.7%増、トヨタ紡織27.2%増、豊田合成32.9%増の4社が軒並み増益を確保した一方、豊田自動織機は38.2%減と大幅な減益となった。ここから見えるのは、単に販売が増えた会社が強いのではなく、熱マネジメント、電動化、安全・内外装など、原価上昇を吸収しやすい高付加価値な部品を持つ会社が相対的に優位に立っているという構図である。
デンソーの高利益率を支えているのは、高度な熱マネジメントシステムや各種センサー、急速に拡大する電動化領域における製品群だ。これらはソフトウェアや制御技術そのものが価値の源泉となっており、製品原価に占めるナフサ由来の素材コスト比重が相対的に低い。そのため、ナフサショックによる影響を吸収しやすいと考えられる。
一方の豊田合成は、売上規模こそ1兆円強と主要5社の中で最も小さいものの、前述の通り6.9%という高い利益率と30%超の驚異的な営業増益を見せつけた。安全規制の強化を追い風にしたエアバッグなどの製品が、原価高騰への価格転嫁力を発揮し得る地力を示している。
対照的なのが、業界屈指の売上規模を誇る豊田自動織機の業績である。同社は圧倒的な規模を持つものの、直近の決算ではエンジン認証関連費用の増加といった一過性の要因に加え、フォークリフトを主力とする産業車両事業、自動車の受託組み立て、繊維機械など、複合的な事業構造が裏目に出た可能性が考えられる。規模の経済が働きやすい反面、今後ナフサ高が本格化しさらなる原価上昇局面が訪れた場合、多岐にわたる事業それぞれでコストが膨張し、結果として利益率を激しく圧迫する足枷となりかねない。 【次ページ】ナフサショックに「勝てる会社」はどこか?
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