• 2026/06/03 掲載

三菱重工が圧勝?「43兆円特需」なのに脱落危機…防衛5社比較で見えた「残酷な選別」(2/2)

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日本の防衛輸出に立ちはだかる「世界の壁」とは

 政府は防衛装備品輸出の拡大へ舵を切ったが、現実には課題は多い。最大の焦点は、英国・イタリアと共同開発する次期戦闘機「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」だ。日本にとっては、戦後初めて本格的な戦闘機輸出を視野に入れた大型案件となる。三菱重工が機体分野、IHIがエンジンを担い、日本の防衛産業にとって極めて重要なプロジェクトになる。

 ただ、国際市場の壁は高い。象徴的なのが新明和工業のUS-2飛行艇である。インド向け輸出が長年検討されてきたが、価格や運用コストが課題となり、正式契約には至っていない。性能だけでは輸出競争に勝てない現実を示した例でもある。

 欧米企業との差として大きいのが実戦経験だ。ロッキード・マーチンやRTX、BAEシステムズなどは、実戦投入実績を通じて性能や信頼性を示してきた。さらに大量生産によるコスト競争力も持つ。

 対して日本企業は国内向け中心だったため、生産数量が少なく、価格が高くなりやすい。輸出専門の営業人材や政府間交渉のノウハウも十分とは言えない。

 防衛産業は通常の製造業とは違い、外交と一体で動く産業である。欧米では政府首脳が武器輸出を後押しすることも珍しくないが、日本にはそうした蓄積が乏しい。

 それでも政府が輸出拡大へ踏み込むのは、国内需要だけでは産業を維持できないからだ。防衛予算が増えても、国内市場だけでは量産効果に限界がある。輸出なしではコスト低減も難しい。

 日本の防衛産業は今、「輸出しなければ維持できないが、輸出経験が足りない」という難しい局面に入っている。

防衛バブルの裏で深刻化する「3つの危機」

 一方、現場では別の問題も深刻化している。ここでは3点を取り上げる。

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防衛バブルがある一方で、現場では3つの問題が深刻化している
(編集部作成)

 1つは利益率の低さだ。防衛装備品は仕様変更が多く、少量生産になりやすい。高度な品質管理や長期保守も求められるため、量産による採算改善が難しい。

 三菱重工や川崎重工のような大手は事業規模で吸収できるが、中堅・中小企業には重い負担になる。防衛省が2023年度から利益率算定方式を見直したのも、従来制度では企業側の負担が大きすぎたためだ。

 もう1つ深刻なのが技術者不足である。防衛装備品には高度な溶接や特殊鋼加工、精密制御などが必要になるが、少子高齢化に加え、防衛産業そのものが若手人材にとって魅力的な就職先として認識されにくかった。特に中小サプライヤーでは熟練技術者の高齢化が進み、「10年後に同じ品質で作れる保証がない」という声も出ている。

 そして3つ目が、政府依存が強まるほど競争力が低下するリスクもあることだ。安全保障上、一定の保護は必要だが、保護に頼りすぎれば国際競争力を失いかねない。

 半導体産業でも、政府支援だけでは競争力を維持できないという課題が浮上している。防衛産業も同じ構図を抱える。短期的には政府支援で支えられても、輸出競争力や開発スピードを高められなければ、世界市場で埋もれる可能性がある。

 防衛予算拡大は、日本の防衛産業にとって大きな転機であることは間違いない。ただ、その先で起きているのは単純な“防衛バブル”ではない。国家が支える企業と、競争から脱落していく企業。その選別がすでに始まっているかもしれない。

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