• 2026/07/17 06:50 掲載

OpenAI vs SpaceX…次の競争はAIデバイスへ、勝敗を分けるのは「あのサービス」?

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業の米SpaceXが、AIデバイスの開発に乗り出したとの観測が浮上した。競合となるのは、マスク氏がライバル視するサム・アルトマン氏率いる米OpenAIの次世代AIデバイスだ。デザインやAI性能だけを比べれば、勝敗はまだ見えない。だがSpaceXには、OpenAIが持たない「あのサービス」がある。公開情報から両社の構想を比較し、AIデバイス競争の勝者を占う。なお、OpenAIは7月15日、コーディング支援AI「Codex」の操作に特化したキーパッド「Codex Micro」を発売したが、本稿で扱うのは、同製品とは別にOpenAIがジョナサン・アイブ氏らと開発を進めている次世代AIデバイスである。
執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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激化するイーロン・マスクとサム・アルトマンのAI開発競争。次に注目されているのはAIデバイスだ
(画像:本文をもとに生成AIで作成)

マスク氏が披露した“iPhoneより薄い”AIデバイス試作品

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、SpaceXは2026年6月12日の新規株式公開(IPO)を前に、AIデバイスの試作品を一部の投資家に披露した。

 事情に詳しい関係者によると、そのデバイスはスマートフォンのようなハンドセット型であり、洗練されたスリムなデザインで、iPhoneよりも薄かったという。

 設計はまだ初期段階であり変更の可能性があるものの、SpaceXのAIデバイスの形態は、小型のタッチスクリーン式スマホと、スマホの約半分のサイズのハンドヘルド型AIデバイスである米ラビットのRabbit R1との中間のような製品ではないかと噂されている。特に、試作品がアップル製品の洗練性をオマージュするものであったことは重要だ。

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【画像付き記事全文はこちら】
イーロン・マスクが注力するAIデバイス、決め手はSpaceXAI独自の“あの技術”?
(Photo:JOCA_PH/Shutterstock.com)

 SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏は、何かと長年の宿敵であるOpenAIのサム・アルトマンCEOに対して競争心をむき出しにするが、AIデバイスのデザインにおいても明らかにアルトマン氏を意識しているからだ。

 実はOpenAIでは、米アップルの元チーフデザイナーであったジョナサン・アイブ氏がデバイス開発を指揮している。アイブ氏は「シンプルかつ機能的」というデザイン哲学で、高級テック製品の基準を築いてきた人物だ。

 マスク氏のAIデバイスは、アイブ氏が手がけるOpenAIのAIデバイスに匹敵する完成度を示せなければ、消費者の関心を集めるのは難しいだろう。ユーザーに毎日利用してもらうためには、外見においても機能面においても、アップル製品並みの高い基準が求められているわけだ。

 この「アイブ氏の設計水準の壁」をマスク氏が乗り越えることは容易なタスクではない。

 だが、少なくとも試作品を実際に見た投資家たちに「洗練されている」と唸らせたところまでは、成功と言えよう。テスト段階の製品を投資家に見せるほど、マスク氏が自社のAIデバイスに自信を持っている証左と見ることも可能だ。
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“スクリーン撤廃のOpenAI、“スマホ代替”のSpaceX

 しかし、SpaceXのAIデバイスがOpenAIのAIデバイスと決定的に異なるのは、その基本コンセプトだ。

 SpaceXのデバイスは、検索・通信・決済・購入を集約するSpaceXAI(旧xAI、マスク氏が設立し、AIチャットボット「Grok」を開発するAI企業)のスーパーアプリがフル性能を発揮する「スクリーン付きデバイス」と位置付けられる。一方、OpenAIのデバイスは、ユーザーの「スクリーン疲れ」に対するソリューションとして構想されており、スクリーンを持たない。

 また、別の重要な相違点として、マスク氏がEVや宇宙ロケットなど、製造業の面で経験とノウハウが豊富であるのに対し、アルトマン氏はそのような経歴を持たず、アイブ氏に依存している面が大きいことが挙げられよう。

 SpaceXは、関連会社のテスラと同様に、大量のAIデバイスを量産する製造ノウハウを有している。さらに、デバイス上での演算を支えるチップの製造さえも可能であるところが、成功できるAIデバイス開発に期待を抱かせる。

 現段階において、マスク氏は自社AIデバイスに関する報道について、即座に「まったくの誤り」だと否定している。しかし、報道のどの部分が誤りなのか、具体的に明らかにしていない。また、テック大手が進行中の開発プロジェクトをリークされた場合、とりあえず全面否定することは珍しくないとされ、米メディアでは引き続きSpaceXがAIデバイスを発売するつもりだとの捉え方で報じられている。

 対するOpenAIは2025年に、65億ドル(約1兆430億円)の巨費を投じ、設立されたばかりであったAIデバイス・スタートアップのioを買収してアイブ氏と組んだ。しかし、開発がかなり難航していると伝えられる。細部まで製品の完璧さを追求するアイブ氏のことであるから、不完全なままの見切り発車はできないのだろう。

 加えて、2026年7月10日には米アップルが、「OpenAIのAIデバイスは、アップルのハードウェアに関する営業秘密を不正に取得して開発されている」として、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した。

 今回の訴訟で訴えられたのは、OpenAIおよび以前アップルに在籍していたOpenAIの最高ハードウエア責任者であるタン・タン氏とソフトウェアエンジニアのチャン・リウ氏の2名だ。

 一方で、OpenAIがアイブ氏と共同開発中のAIデバイスは、開発中の数種類の中で最もアップルのハードウェアからほど遠い「スクリーンなしのスマートスピーカー型」になると報じられている

 そのため、当初目標にしていた「2026年中の発売当日に100万個を出荷する」という夢は、まだ実現していない。さらに、アルトマン氏とアイブ氏が製品開発の前提としている「ユーザーのスクリーン疲れ」が正しい見方なのかも定かではない。

 結局のところ、ユーザーは自身の目で直観的に確認できるスクリーンから離れられないのではないかと思われるからだ。 【次ページ】AIデバイス競争、勝敗を分けるのは「あのサービス」?
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