• 2026/07/01 掲載

なぜ中国企業は強く見えるのか…日本企業が勘違いするテック強国の「本当の実力」

連載:テック超大国・中国のゆくえ

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レアアースなどの上流資源で圧倒的な存在感を持つ中国。しかし、AIやヒト型ロボットの競争力を左右する半導体や基盤ソフトウェアでは、いまだ課題が残る。中国テック企業の成長は自前の技術だけで築かれたわけではない。WTO加盟後の技術吸収、国家支援、巨大市場が果たした役割など急成長の背景をたどり、半導体製造装置やAIなど先端技術分野の“弱点”を検証する。
執筆:エコノミスト 柯隆

エコノミスト 柯隆

1963年、中華人民共和国・江蘇省南京市生まれ。88年来日、愛知大学法経学部入学。92年、同大卒業。94年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)。長銀総合研究所国際調査部研究員(98年まで)。98~2006年、富士通総研経済研究所主任研究員、06年より同主席研究員を経て、現在東京財団政策研究所常勤研究員。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授を兼務。主な著書に『中国不動産バブル』(文藝春秋)など。

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中国と米国は技術大国としてそれぞれ異なる強みを持つ
(Photo/Rawpixel.com/Shutterstock.com)

とにかく速くて安い、日本企業が恐れる中国企業

 日本企業の経営者と中国企業について意見交換をすると、多くの経営者が中国企業を強力な競争相手、あるいは脅威として認識していることが分かる。その理由として挙げられるのは、技術開発のスピード、経営判断の迅速さ、そして製品・サービスの価格競争力である。

 これらの点を日本企業と比較すると、その違いは明確である。日本企業の技術開発は、既存技術を積み重ねるアプローチを採ることが多く、開発期間が長期化しやすい。また、大企業ほど意思決定プロセスが複雑であり、稟議制度をはじめ経営判断に時間を要する傾向がある。

 一方で、日本企業は品質や信頼性で優位性を維持しているものの、価格競争の面では中国企業に対抗することが容易ではない。
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 では中国企業はなぜ短期間で技術力を向上させることができたのだろうか。

 大きな転機となったのは、2001年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟である。当時の江沢民政権は、市場開放を進めることを約束し、悲願だったWTO加盟を実現した。これを受けて、日本企業をはじめとする外国企業は製造業だけでなく、流通・物流、金融関連分野にも積極的に進出した。

 それまで外国企業は、中国政府による外貨バランス規制を受けていた。すなわち、輸入する部品や素材の金額を輸出額と均衡させる必要があった。

 しかし、WTO加盟後はこうした規制が緩和され、外国企業は中国国内で研究開発(R&D)センターを設立するようになった。

 この過程で、中国企業は外国企業との取引や人材交流、共同研究などを通じて技術やノウハウを吸収した。また、中国政府も技術移転や人材育成を重視し、海外留学経験者や外国企業で働く高度人材の帰国を積極的に促進した。その代表例が後に実施された「千人計画」(2008年から中国政府が主導する海外の優秀な専門家を中国に招致する国家プロジェクト)である。

 振り返れば、1990年代は中国テック企業の草創期であり、2000年代は先進国の企業から技術や経営ノウハウを吸収するキャッチアップ期だったと言える。

 巨大な国内市場を有する中国では、外国企業の技術やビジネスモデルが急速に普及しやすく、その結果、中国企業の成長スピードは世界の注目を集めた。

 当時、多くの研究者や評論家が中国の高成長を「中国の奇跡」と評価し、「21世紀は中国の世紀になる」と予測したのも、こうした背景があった。 【次ページ】【米国への挑戦状】習近平政権による「中国製造2025」の代償
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