- 2026/08/10 06:50 掲載
【潜入】ANAとの違いはここだ、米国現地で目撃したユナイテッド航空「司令塔」の凄さ
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ダイヤモンド・オンラインでの連載、ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
面積は全米一…巨大ハブ空港の司令塔「SOC」
デンバー国際空港(米国)は米ユナイテッド航空最大級のハブ空港の1つである。国際線の規模ではニューアークやヒューストンには及ばないものの、敷地面積は全米一であり、国内線ネットワークのかなめとして、1日を通じて数百便が発着する。その運航を支えているのがSOC(ステーションオペレーションセンター)である。デンバー国際空港にはメインターミナルビルのほかにA~Cの3つの独立したコンコースが存在する。SOCはユナイテッド航空専用となるBコンコース内中央部に設置され、運航管理、整備、旅客、貨物、乗員配置など、多くの担当者が1つのフロアに集まっている。
全員が同じ情報を共有し、「航空機を安全かつ定時に出発させる」という1つの目的に向かって動いている。
悪天候による遅延、機材故障、乗員交代、ゲート変更など、航空会社には1日に何百件ものイレギュラーが発生する。SOCでは、それらを現場で即座に判断し、必要であれば機材変更やゲート変更も迅速に決定する。
最優先されるのは、「今、何をすれば最も安全で効率的に運航できるか」である。この考え方が巨大なネットワークを支えている。
1日数千便を24時間監視、本社「NOC」とのスゴイ連携
しかし、SOCだけでは世界最大の航空会社は動かない。デンバーSOCが管理しているのは、あくまでもデンバー国際空港という1つの拠点である。その上位にはシカゴ本社のNOC(ネットワークオペレーションセンター)が存在する。全世界へ飛ぶ数千便の運航状況を24時間365日監視し、7つのハブ空港のSOCとリアルタイムで情報を共有している。
たとえばシカゴで雷雨が発生すれば、その影響はデンバーやサンフランシスコ、ニューアークにも波及する。1機の遅延は、その航空機が1日に担当する複数便へ連鎖し、乗員スケジュールや整備計画にも影響を及ぼす。
NOCは全体最適を考えながらネットワーク全体を俯瞰し、各SOCは現場の状況を踏まえて最善策を実行する。中央集権でもなく、完全な地方分権でもない。本社と現場が役割を明確に分担することで、世界最大級の航空ネットワークを機能させているのである。
もう1つの管制塔「ランプコントロール」の正体
SOCの上階にはランプコントロール(ランプとは、乗客の乗り降りなどを行う駐機場のこと)が設置されている。ここからはBコンコースの両翼に並ぶおよそ100ものスポットを一望でき、航空機のプッシュバックやトーイング、地上車両の動きをリアルタイムで管理している。
航空管制官が滑走路や誘導路を担当するのに対し、ランプコントロールは航空会社専用エリアとなるスポットを管理する「もう1つの管制塔」とも言える存在である。デンバーでは、市の職員とユナイテッド航空の社員が一緒にここで働く。
取材中も大型モニターには全ゲートの状況が映し出され、監視カメラ映像と運航システムを照合しながら、1機1機の出発タイミングを秒単位で調整していた。
Bコンコースの西端にはアウトドアデッキがあり、出発前の搭乗客は外の空気を浴びながら航空機を眺めることができる。ここに出向けば、目の前の待機スポットで駐機場が空くのを待つ到着航空機が見える。ランプコントローラーの手でさばかれた機体は流れに沿って動いていくことが手に取るようにわかる。
数十機もの航空機が同時に動くにもかかわらず、現場には慌ただしさよりも落ち着いた緊張感が漂っていた。そこには経験だけではなく、情報システムによる可視化と、長年培われた運航に対するマネージメント文化が存在していた。 【次ページ】岡山県人も活躍する「超専門的な仕事」とは
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