- 2026/08/07 06:50 掲載
義務化から1年「建設現場の熱中症対策」“酷暑”に何を見直すべき?【社労士が解説】
社会保険労務士・行政書士浜田佳孝事務所代表。Hamar合同会社代表社員。法学部出身でありながら、市役所の先輩や土木施工管理技士である父親の影響を受け、土木技術の凄さに興味を持ち、研鑽を積む。そして、市役所勤務時代には公共工事の監督員として、道路築造工事や造成工事などの設計・施工を担当した実績を持つ。
現在は、「建設業の現場を経験した」社会保険労務士・行政書士として、建設業の労務管理・建設業許可・入札関係業務を主軸に、建設業の働き方改革・安全衛生コンサルティングを始めとした「現場支援」業務を行ってる。また、商工会主催の「建設業の働き方改革セミナー」を開催し、働き方改革に関する多くの相談を建設業者などから受けている。
著書に 最新労働基準法対応版 建設業働き方改革即効対策マニュアル、図解即戦 建設業法の規制と対応がこれ1冊でしっかりわかる本がある。そのほか、中小企業の建設業の経営者に向けた YouTubeチャンネルを開設し、建設業界に関係する最新の知識やお役立ち情報などを日々発信している。
過去最多となった熱中症災害…データから見る現状
熱中症対策の義務化から1年、対策はどこまで進んだのでしょうか。この1年、多くの建設会社ではWBGT(暑さ指数)の測定や休憩場所の確保、緊急連絡体制の整備が進み、空調服や冷却ベストを導入する企業も増えました。熱中症を、個人の体調管理ではなく組織的に対応すべき労働災害と捉える意識も広がっています。
ただし、設備やマニュアルを用意しただけで被害を防げるとは限りません。体調不良を申告しやすい環境か、異常時に現場責任者が迷わず判断できるか、搬送まで迅速に動けるか。
義務化2年目に問われるのは、対策の有無ではなく、それが現場で機能するかどうかです。
厚生労働省が2026年5月に公表した「令和7年(2025年)職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、2025年の死傷者数(死亡・休業4日以上)は1803人で、前年から約43%増加。統計開始以来の過去最多で、更新は2年連続です。
建設業では死傷者292人、死亡5人となり、建設業の死亡者数は全産業で最も多くなりました。
一方、全産業の死亡者数は前年の31人から19人へ減少しており、厚生労働省は義務化された報告体制や対応手順の整備など重篤化防止対策が一定の効果を発揮した可能性を示しています。発生そのものは防ぎきれなくても、適切な初動対応が命を守ることにつながった可能性がある、ということです。
背景には2025年の記録的な猛暑もあります。6~8月の全国平均気温偏差は統計開始以来最高水準で、屋外作業が中心の建設業は気象の影響を避けられません。
だからこそ、被害を抑える鍵は、初期症状を見逃さず適切な初動につなげることです。本稿では、昨年の義務化の内容を振り返るとともに、義務化後に起きた実際の災害事案を解説し、そこから見える共通点を整理します。さらに、厳しい暑さが予想される今夏に向けて、現場で押さえておくべき対応のポイントを確認していきます。
まずは再確認、義務化で求められている「3つの対応」
2025年6月に施行された労働安全衛生規則の改正では、高温環境下で作業を行う事業者に対し、熱中症の「重篤化防止」を目的とした体制整備が義務付けられました。対象となるのは、「WBGT値28以上または気温31℃以上の環境下で、継続して1時間以上、または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業」です。
企業に求められる主な対応は、大きく3つあります。
(1)作業者の体調不良や熱中症の疑いを速やかに報告できる体制を整備すること
(2)異常が認められた場合の対応手順をあらかじめ定め、作業からの離脱、身体の冷却、医療機関への搬送などを迅速に実施できるようにすること
(3)報告体制や対応手順を、現場で働く作業員や関係者へ確実に周知すること
こうした内容は、昨年の記事でも詳しく解説したため、本稿では詳細な説明は割愛します。
義務化から1年が経過した現在、重要なのは「マニュアルを作成した」「朝礼で周知した」という形式的な対応にとどまらず、それらが実際の現場で運用され、緊急時に機能する状態になっているかという点です。
義務化2年目は、制度への対応から「実効性のある運用」へとステージが移りつつあると言えるでしょう。 【次ページ】義務化後に起きた建設業における熱中症事故のリアル
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