- 2026/05/29 掲載
“カンフー”ヒト型ロボットの実力は本物?「ハイテク覇権」急ぐ中国が犯した大誤算
連載:テック超大国・中国のゆくえ
1963年、中華人民共和国・江蘇省南京市生まれ。88年来日、愛知大学法経学部入学。92年、同大卒業。94年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)。長銀総合研究所国際調査部研究員(98年まで)。98~2006年、富士通総研経済研究所主任研究員、06年より同主席研究員を経て、現在東京財団政策研究所常勤研究員。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授を兼務。主な著書に『中国不動産バブル』(文藝春秋)など。
次の5年はAI・ヒト型ロボットへ巨額投資
2026年3月、北京で全国人民代表大会(日本の国会に相当)が開催され、今年から始まる第15次5カ年計画が審議・採択された。同計画には、今後5年間に重点的に支援する産業として、半導体、AI(人工知能)、そしてヒト型ロボットの開発が盛り込まれている。図に示されているのは、レアメタル、半導体、AI、ヒト型ロボットに至るサプライチェーンである。この中で、中国が比較優位を持っているのは、川上に位置するレアメタルの供給である。
一方で習近平政権は第15次5カ年計画において、川下産業であるヒト型ロボットの開発を重点的に支援する方針を打ち出している。
中国半導体産業が直面する「対中包囲網」
しかし、半導体分野においては、日米を中心として構築された経済安全保障体制によって、中国は日本やオランダなどから最先端の半導体製造装置を輸入することが難しくなっている。たとえば、ファーウェイは既存の14ナノメートル世代の製造装置を用いて7ナノメートル半導体の開発・製造に成功したと報じられた。しかし、実際には歩留まりが低いと見られており、大規模な量産には至っていない。習近平政権は引き続き「自力更生」を掲げ、最先端半導体の国産化を推進しているものの、その進展は限定的である。
結果として、半導体技術の覇権は依然として米国、日本、オランダ、台湾、韓国によって握られている。少なくとも今後しばらくの間、この構図が大きく変化する可能性は低いだろう。
【AI半導体密輸】ディープシーク・ショックの“真相”
では、中国のAI開発はどのような状況にあるのだろうか。2025年1月、中国ディープシークは、最先端の半導体チップを使用せず、独自の演算方式の改良によって、米国の最先端AIに匹敵するAIの開発に成功したと発表した。この発表を受け、一時的に米エヌビディアを含む世界の主要半導体メーカーの株価が急落した。市場では、「AI開発に必ずしも高性能半導体が必要ではなくなるのではないか」との見方が広がったためである。
しかし、その後明らかになったのは、ディープシークが用いた技術の一部には、他社AIの出力データを「蒸留(distillation)」する手法が含まれていたという点である。蒸留とは大量のデータを学習した巨大なAI(教師モデル)の知識を抽出し、より小型で高速なAI(生徒モデル)に移転させる技術だ。また、「最先端半導体を使っていない」という説明についても、実態とのかい離が指摘された。
2026年に入ってからは、エヌビディア製の最先端AI半導体「H200」を中国へ密輸したとして、FBIが台湾系米国人2人を逮捕したことも報じられている(3人目は台湾へ逃亡したとされる)。 【次ページ】AI開発を縛る“中国特有のリスク”とカンフーロボットの実態
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