- 2026/11/03 06:50 掲載
【単独】早大教授・尾形氏にズバリ聞いた、日本は「フィジカルAI」で本当に勝てるか?(2/2)
日本は世界に勝てるのか? 競争力を発揮する「超重要な条件」
その背景には、生成AIとフィジカルAIでは、学習に使うデータの性質が大きく異なることにあります。文章や画像は、異なる環境で作られたものでも比較的共通の形式で扱えますが、ロボットの動作データは、関節の構造や数、カメラの位置、センサーの種類など、機体の仕様によって異なります。
そのため、生成AIで先行する企業が、そのままフィジカルAIでも優位に立てるとは限りません。ハードウェアとデータ、AIを一体で開発できる体制こそ、日本企業が競争力を発揮するための重要な条件になると考えます。
また、課題となるのは人材と文化の融合です。物理世界を微分方程式やタイムプレッシャー(時間圧)の中で捉えるロボット・機械専門家と、世界を確率・統計データとして最適化するAI専門家では、大学の教育体系からして思考プロセスが異なります。この両者を行き来できる柔軟な人材をどれだけ増やせるかが、日本の勝ち筋を左右します。
実用化にはAIモデル、半導体、センサー、通信、ハードウェアなど多岐にわたる技術が必要ですが、どれか1つではなく「総合的にそろえられること」こそが重要です。日本は自国で産業用ロボットを総合的に生産できる数少ない国の1つです。
日本の歴史を見ても、自動車や家電など、最初は遅れていると言われてもキャッチアップして高品質で低価格なプロダクトに仕上げていく強みを持っています。情報プラットフォームや一部の基盤は海外に握られている部分もありますが、フィジカル(物理空間)の強みを融合させることで、日本独自の優位性を確立することは十分可能です。
政府が2040年までに世界市場の3割にあたる20兆円の獲得を目指すなど、フィジカルAIを国策の筆頭に位置づけたことは研究者としても非常にありがたいことです。
分野の進化スピードがあまりにも速いため、今すぐ応用・実装を進める施策とロングスパンの基礎研究の両方にバランスよく予算と体制を整える難しさはあります。しかし、AIは米国に、ハードは中国に任せればいいと投げ出すのではなく、これは日本の重要な基幹産業だと捉えて国を挙げて取り組む方針は極めて正しいと感じています。
異例の技術進化…フィジカルAIの「得意な領域」とは
配膳ロボットのように毎回止まる位置が異なっても成立する場所や、ホテル・病院・図書館といった公共施設、さらに高難度な家庭空間などが挙げられます。また、建築現場や災害現場など、人間にとっても過酷ですが、ロボット用に環境を整えることができない場所での活躍も期待されます。食品の盛り付けや複雑な包装など、人間の手作業に依存していた領域にこそフィジカルAIの主戦場があります。
フィジカルAIが日本の新たな基幹産業になり得るかといえば、私は「十分になり得る」と考えています。ここ1~2年の技術進化と世界的な投資の伸び方は異例と言えるスピードです。かつては、こんな複雑なものが売れるはずがないと思われていた多指ハンドや高度なセンサーが今や世界中で大量に買われ、シミュレーションとAIの融合によって進化の加速度が増しています。
AIの進化に伴い、1~2年先を読むことすら難しい激動の時代です。しかし、過去2年の伸び幅をそのまま当てはめれば、近いうちに想像を超える変化が起こります。日本の現場力と製造技術、そして新しいAI技術を融合させることで、勝負できる領域は間違いなく存在します。
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