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- 2023/05/18 掲載
プログラマー「高年収時代」の終焉、好決算でも米IT名物“超・好待遇”が無くなるワケ
米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
アマゾンやマイクロソフトなどが好決算
米ニュースサイトのInsiderが、米IT業界の33万人以上が職を失ったと報じた。これは、全米のレイオフ(一時帰休)を追跡するLayoffs.fyiというサイトが報告したもので、「テック業界には、まだ人員削減の余地がある」との不気味な分析を公表している。特に経営の軸足を「売上の成長」から「利益の成長」にシフトさせているアマゾン、アルファベット(グーグル)、メタ、マイクロソフト、ツイッターは、合わせて7万人ほどを解雇しており、「これらの大手がさらにレイオフを重ねる」とLayoffs.fyiは予想する。事実、メタは3月中旬に1万人、アマゾンは4月下旬にクラウドのAWS部門など9000人を追加で人員削減している。
しかしこれらの企業ではすでに、リストラや大胆なコストカットの効果が見え始めているようだ。
アップルの2023年1~3月期の売上は前年同期から3%減と2四半期連続で減収となったものの、アマゾンは前年同期比9%アップの1,274億ドル(約17.3兆円)。さらに、マイクロソフトは7%増の529億ドル(約7.2兆円)、アルファベットは3%改善して698億ドル(約9.5兆円)、メタも3%増の287億ドル(約3.9兆円)など、軒並み投資家予想を上回る好決算であった(図)。
企業の売上が伸びる一方で社員数が削減されれば、生産性を測るものさしである従業員1人当たりの収益が増える。そのためこれら大手IT企業は売上だけでなく、本当の意味での儲けが増大する可能性を秘めると言えよう。
激減し続けた巨大IT企業の「1人当たり収益」
ここで、社員削減を実施する以前の大手IT企業を見てみよう。まずアマゾンは、従業員数が64万7000人から150万人と2倍以上に増加した2018~2022年の間に、従業員1人当たりの収益が6.9%減少して33万3,550ドル(約4,542万円)にまで下落した。しかし、2022年後半に始まったレイオフでは累計2万7000人が対象となり、アマゾンはかなりスリムになっている。一時的なリストラ費用が発生するものの、2023年の従業員1人当たりの収益が改善される可能性は高いだろう。
メタも2018年から2022年の間に社員数が2倍以上に膨れ上がり、従業員1人当たりの儲けは14%も落ち込んだ。こうした中、累計で2万2000人を削減対象としている。大物実業家イーロン・マスク氏が2022年11月に買収したツイッターに至っては、同期間に60%減と急降下している。そのためマスク氏はツイッター買収後、7500人の従業員を1800人にまで減らした。
このように、米大手ITにおける大胆な人員削減は収益改善の最大の鍵と見られている。米求人サイトBlindがIT系ユーザー1万4000人を対象に行った4月のアンケートでは、51.5%が「プログラムマネージャが年収50万ドル(約6,810万円)を超える高給を得られる時代は終わった」と回答した。
だが、IT企業の収益改善策はこれまでの人員削減にとどまらない。経営陣が「収益に大した貢献をしていない」と見る職種や働き方にまでメスが入ろうとしている。 【次ページ】大物投資家が指摘した「フェイクワーク」とは?
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