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  • 2023/09/12 掲載

損保ジャパン会見で深まる疑惑、デジタル施策が「PR用」といわれかねない理由

FINOLABコラム

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中古車販売大手ビッグモーターによる自動車保険の保険金不正請求問題に関し、損害保険ジャパン本社で100人以上の報道関係者が参加した2023年9月8日の記者会見では、冒頭で白川儀一社長は辞任を表明し、同社のこれまでの対応について説明があった。ここでは、損害保険会社としての信頼回復につながったのかという視点から会見のポイントを解説する。

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。

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損保ジャパンのビッグモーター不正に関する記者会見は「信頼回復」に寄与したか?
(出典:毎日新聞社/アフロ)

損保ジャパン「データ分析によるリスク管理」の内実

 「なぜ損保ジャパンはデータ分析に力を入れていたにも関わらず、指定修理工場として修理金額が大きい取り引き先(ビッグモーター)とのやりとりにおいて、不正請求による金額の“異常値”を検知できなかったのか」──。本メディアの読者の疑問はこの点に集中するのではないだろうか。

 今回の記者会見においても、そうした点に関する質問があった。日経クロステックによる「今回ビッグモーター社から上がってくる請求金額や頻度が同業他社のそれと違うのであればITシステムによって不正を把握できたのではないでしょうか?」という質問に対し、白川社長は以下のような回答を行っている。

「ここは再発防止策にもつながってくる部分だと思っておりますけれども、たとえばオンタイムでという言い方なのか、ダッシュボード的にと言い方なのか、ちょっと表現が難しいのですが、すぐに把握しているようなスキームにはなっておりませんでした」(損害保険ジャパン 白川氏)

 さらに、「今後の改善としてそういったスキームを新システムに実装するようなご予定とかは、今決まっておりますでしょうか?」と日経クロステックが質問したのに対し、白川社長はこう返答している。

「再発防止策全体につきましては、調査委員会からの調査結果を待つ部分ではありますけれども、ただ我々といたしましては、やはり今お話いただいたようなデジタルを使って不正を検知する仕組みの導入も非常に肝要だという認識を持っております。どんなものがいいのかはこれからさまざま検証していく必要があると考えています」
(発言はテレ東BIZ「損保ジャパン社長 会見で辞任を表明(ノーカット)」より収録)

「保険金支払いのデータ分析」は基本的な業務

 損保ジャパンの「データ分析によるリスク管理」について他メディアからの質問はなかったが、記者会見で説明されていたように「ビッグモーターの不正を見抜くことができなかった」ことが、こうしたデータ分析を含めて事実とすれば、同社のリスク管理に欠陥があったということになる。

 保険金支払いのデータ分析は、保険会社のリスク管理においても基本的な業務であり、自動車保険において、修理工場が適正な修理を行って、適正な請求を行っているかをモニターしていくことは必須と考えられる。

 保険システムに詳しい有識者は以下のように語る。

「個別の保険金支払いに際して修理内容と請求額が妥当なものかをチェックすることはリアルタイムで行われている。ビッグモーターによる不正請求について考えると、それぞれの請求については修理内容と請求額に矛盾がないように記載されていたと思われるが、一定期間の請求額を他の修理工場と比較したり、車種ごとの修理金額の実績比較などを行ったりすれば、水増しによって異常値が発生していることは検知できたはずである。ビッグモーターとの取引再開に応じなかった他社は、内部通報などの情報とともにデータ分析も含めた判断を行っていたはずで、損保ジャパンが説明を充分に尽くしているとは思えない」

 記者会見における回答がリアルタイムのアラートが実装されていなかった部分にしか触れていないという可能性もあるが、リスク管理の実態については、金融庁からも説明を求められる点であろう。
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「ビッグモーターとの取引再開に応じなかった他社は、内部通報などの情報とともにデータ分析も含めた判断を行っていたはずで、損保ジャパンが説明を充分に尽くしているとは思えない」
【次ページ】「PR用?のデジタル推進」、深まる「不正への関与疑惑」

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