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  • 2023/10/11 掲載

「偽減税」にだまされるな、“増税メガネ”岸田首相、減税強調も12月から増税ラッシュ

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

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岸田首相は、新たな経済政策として「減税」を強調している。2021年10月の首相就任以来、減税措置を講じてこなかったために、この突然の方針変更に戸惑いや批判の声が多く上がっている。さらには、この政策を掲げて「減税解散」に踏み切るのではないか、という憶測も飛び交った。12月以降から増税ラッシュを迎えるということもあり、「偽減税」だとも言われているこの政策で岸田政権はイメージを払拭することはできるのであろうか。

執筆:ITOMOS研究所所長 小倉健一

執筆:ITOMOS研究所所長 小倉健一

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岸田政権の減税政策の裏に隠されたものとは…
(出典:毎日新聞社/アフロ)

増税主義者が打ち出した「減税政策」

 「増税メガネ」などとの揶揄に耐えきれなくなったのか、岸田文雄首相が「減税」も政策メニューへ加えることになった。

 岸田首相は、筋金入りの増税主義者として、国会のある永田町では知られてきた。自身の出身派閥『宏池会』では、財務省出身者が名を連ねており、増税を主導してきた面もある。

 過去をさかのぼれば、宏池会出身の池田勇人元首相は、「1,000億円施策、1,000億円減税」を掲げ、日本の高度経済成長を減税という形で支えた。有名な『所得倍増計画』では、防衛費を最小限に抑え、民生向上を中心とした経済政策に優先的に配分していった。

 宏池会が外交面ではリベラルな立場を貫く政治家が多いにも関わらず、自分たちが「保守本流」であることを事あるごとに強調するのは、こうした戦後の経済成長を、宏池会が引っ張ってきたことが念頭にあるからである。

 しかし、宏池会は、池田政権の「官僚主導」という側面だけが拡大していくという組織の変容を遂げていってしまったようだ。今では、自民党全体でバラマキ政策を練り上げたところで、必死でファイナンスをする役目を負わされることになっている。

 宏池会は、自民党内で財源や増税議論をするたびに重用され、影響力が拡大する派閥に成り果ててしまったのである。

 岸田首相も、そんな宏池会を表した政治家の1人である。岸田首相は、かつて「日本の政治は消費税率引き上げにさまざまなトラウマがある。成功体験を実感することが大事だ」「消費税を引き上げる、ぜひ、この引き上げを円滑に行うことによって、引き上げの成功体験を国民の皆さんとともに実感し、未来を考える、こういったことの意味は大変大きい」などと発言している。

 増税が一部のバラマキ先の財源になるという意味では、一部の人にとっての成功体験になるのだろうが、大半の人にとってはただ負担が増えるだけの結果になる。

なぜ? 実質賃金は「17カ月連続」でマイナスに

 日銀が2000年に発表したレポートによれば「国民負担率が1%上昇すれば成長率は0.30%低下し、潜在的国民負担率が1%上昇すれば成長率は0.27%低下する」「国民負担率の上昇→貯蓄率の低下→資本蓄積の阻害→成長の制約というメカニズムの存在を示唆しているように思われる」という。

 また、第一生命研究所(エコノミスト・永濱利廣氏)が発表したレポートによると、「国民負担率(税・社会保障負担の国民所得に対する割合)の上昇により可処分所得が減少すれば、消費支出が削減されるほか、貯蓄の減少ももたらすことになる。国全体としての貯蓄率の低下は、中長期的に資本ストックの減少をもたらし、潜在成長率の低下につながる」という。

 ほかにも同じ結論を示唆するレポートはあるのだが、いずれにしろ、国民負担を軽くしなくては、消費は増えないし、経済成長も果たせないということだ。

 家計について、岸田首相は、「低迷してきた賃金は物価高を上回る、3.5%超の引き上げで労使交渉が妥結し、最低賃金も来月から4.5%引き上げる」(2023年9月22日ニューヨーク経済クラブでの岸田文雄首相の講演より)と発言したが、実質賃金は17カ月連続でマイナスだ。

 ミスリードを誘う言い方をニューヨークの投資家相手にしているわけだが、岸田首相は証券会社の営業にでもなってしまったのだろうか。

画像
物価上昇に賃金の増加が追い付いていないのが現状である
(Photo/Shutterstock.com)

 額面上の賃金ばかりを与野党含めて議論したがるが、私たちにとって大事なのは、当然ながら、手元に残る賃金が大事であり、実質賃金が上がらなくては何の意味もない。このままでは、取られる所得税が増えるだけの話である。 【次ページ】12月に待ち受ける「増税ラッシュ」

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