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  • 2024/03/18 掲載

なぜ国は「金融・資産運用特区」を創設する? 候補の「4自治体」と「事例」を解説

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金融庁は、国内外の金融事業者を呼び集めてビジネスを支援する「金融・資産運用特区」を立ち上げる方針です。この1月には他の候補地に先駆けて「北海道・札幌市」が、金融庁に正式に提案書を提出しました。特区創設に向けた国の動きと、誘致に向けた各地の取り組みに加え、これまでの「特区事例」を解説します。
執筆:堀尾大悟、取材・編集:川辺和将

執筆:堀尾大悟、取材・編集:川辺和将

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提案第1号「Team Sapporo-Hokkaido」の計画について井林辰憲・内閣府副大臣(右)に説明する秋元克広・札幌市長(左)
(霞が関の金融庁庁舎で2024年1月23日、川辺和将撮影)

「金融・資産運用特区」とは何か?

 「金融・資産運用特区」とは、海外資産運用会社を中心とした国内外の事業者の集積地で、国家戦略特区制度の枠組みを活用して創設される見通しです。2023年12月に政府の新しい資本主義実現会議が策定した「資産運用立国実現プラン」で、各地の自治体と協力して設置する方針が示されました。

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特区創設を盛り込んだ資産運用立国実現プランの全体像
(出典:金融庁 報道発表

 政府が特区創設を持ち出した背景には、2つの政策的な課題があります。

 1つは、預貯金に偏り気味の家計資産を投資に回す、いわゆる「貯蓄から投資へ」の流れの促進です。

 2019年に注目を浴びた「2000万円不足問題」では、貯金の取り崩しと年金だけでリタイア後の生活水準を維持する難しさが意識されるようになりました。ただ、現状では日本の家計金融資産2,115兆円(2023年6月末時点)のうち半分以上を現預金が占めています。国は2024年1月にはNISA制度を拡充し、老後に向けた資産形成のための自助努力を国民に促しています。

 もう1つの政策課題が、スタートアップ分野やサステナビリティ分野を含む、国内事業者への成長資金供給です。

 新しい資本主義実現会議が2021年に策定した「スタートアップ育成5カ年計画」では、スタートアップ投資額を2027年度に計画策定時点の10倍(10兆円規模)に拡大するとの目標を掲げました。

 政府は今回の資産運用立国実現プランの中で、公的年金や企業年金、保険会社など、将来の生活を支える原資を預かって運用するアセットオーナーに対して、スタートアップ投資などオルタナティブ投資を促す考えをにじませています。

 個人やアセットオーナーの投資資金が成長分野に回るためには、資金の受け皿となる資産運用会社や金融機関の存在が重要なカギを握ります。

 日本における資産運用セクターが運用する資金は直近で約833兆円であり、近年では増加傾向にあります。

 しかし、経済規模(GDP)に占める資産運用残高の割合は1.4%と、イギリス(4.3%)、米国(2.1%)、フランス(1.9%)に比べ見劣りしています。

 日本における資産運用会社数も、長期的には増加傾向にあるものの、特に投資信託委託業者については2017年(100社)から2022年(109社)と微増にとどまり、新規参入は限定的な状況となっています。裏を返せば、日本における資産運用ビジネスにはまだのびしろがあるということもできるでしょう。 【次ページ】名乗りを上げた「4つの自治体」、その違いは何か?

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