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- 2025/10/07 掲載
「金融行政方針2025」の衝撃、“定期検査なし”でも不正を逃さない新監督モデル
大野博堂の金融最前線(91)
93年早稲田大学卒後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。金融派生商品のプライシングシステムの企画などに従事。大蔵省大臣官房総合政策課でマクロ経済分析を担当した後、2006年からNTTデータ経営研究所。経営コンサルタントとして金融政策の調査・分析に従事するほか、自治体の政策アドバイザーを務めるなど、地域公共政策も担う。著書に「金融システム監査の要点」(経済法令研究会)「金融機関のためのサイバーセキュリティとBCPの実務」「AIが変える2025年の銀行業務」など。飯能信用金庫非常勤監事。東京科学大学CUMOTサイバーセキュリティ経営戦略コース講師。宮崎県都城市市政活性化アドバイザー。
地方創生2.0と金融庁が地域金融に突きつける“次の宿題”
例年どおり金融庁が8月29日に2025事務年度金融行政方針を発表した。政府が推進する地方創生2.0を念頭に、地域の持続的な発展を実現するため、金融機関が地域経済に貢献する力を発揮するための取組等を検討・実施するとしている。これまでも金融庁は地域課題に寄り添った支援機能の発揮を地域金融機関に要請してきており、これに沿った動きである。ただし、いわゆる「インパクト」を推進してきたこれまでの金融機関の取り組みをみると、各地域の共通課題を掲げた「単なる公債発行」の企画・立案にとどまるなど、本来の「インパクト」が企図する狙いとは相容れない支援活動にとどまってきた、との指摘もある。
これまでもESG、SDGsなどのバズワードは登場したものの、つまるところ、単なる「趣旨を変えた融資」にとどまってきたきらいもある。そのため、各地域で異なる地勢的因子や人口構造への変容の中身、人口区分別の就業状況などを勘案したうえで、個々の営業エリアの地域を取り巻く課題を明確に特定することが期待されている。
これを前提に、各地域金融機関が「オーダーメイド」型で工夫をこらした支援パッケージを地域に提供することが必要とされているわけだ。
現在、一部の地銀では、営業エリアとなる地元地域を統計資料から傾向的に分析し、他地域との偏差を見計らったうえでその特異性を生み出す因子を見出そうと取り組み始めている。こうした動きが加速することで、どの地域にも共通するような一般的な支援スキームではなく、当該地域に残置される本質的な課題への対処が可能となるだろう。

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