- 2026/01/23 掲載
地域金融力強化プランの読み方、なぜ鹿児島銀行は“机上の地域創生”を捨てたのか
大野博堂の金融最前線連載第95回
93年早稲田大学卒後、NTTデータ通信(現NTTデータ)入社。金融派生商品のプライシングシステムの企画などに従事。大蔵省大臣官房総合政策課でマクロ経済分析を担当した後、2006年からNTTデータ経営研究所。経営コンサルタントとして金融政策の調査・分析に従事するほか、自治体の政策アドバイザーを務めるなど、地域公共政策も担う。著書に「金融システム監査の要点」(経済法令研究会)「金融機関のためのサイバーセキュリティとBCPの実務」「AIが変える2025年の銀行業務」など。飯能信用金庫非常勤監事。東京科学大学CUMOTサイバーセキュリティ経営戦略コース講師。宮崎県都城市市政活性化アドバイザー。
人口減少のインパクト、地域金融が直視すべき“不可逆の現実”
はじめに、地域金融機関の経営を左右する人口動態の現状を整理しておきたい。下の図は厚生労働省が2023年5月に公表した将来人口推計の結果を示したものである。この時点での厚生労働省の見方によれば、合計特殊出生率は低下(1.44→1.36)しているものの、平均寿命が延伸したことと外国人の入国超過数が増加することで、総人口の人口減少は緩和傾向にある、としている。
ただし、グラフをみてわかるとおり、足元で急激に減少しつつある合計特殊出生率とはうらはらに、推計に用いる前提条件としての出生率は約1.3と横置きのままであり、相当に楽観的なシナリオでの推計を実施していることがうかがえる。
実際、最新のデータとなる厚生労働省が2024年6月に公表した「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2024年時点における日本の合計特殊出生率は1.15で前年比0.05減となり、過去最低を示している。
この傾向は都市部でも地域部でも大きくは変わらず、一見出生率が高そうな都市部においても、東京都の出生率は2024年で0.96と全国平均を大きく下回るだけでなく、実は都道府県でみても最下位となっており、ついに1を割る水準を記録することとなった。これに続くのは奈良県(0.98)、徳島県(0.99)、宮城県(1.00)である。逆に最も出生率が高いのは沖縄県だが、それでも人口維持に必要な人口置換水準(約2.0)に満たない1.54にとどまった。
東京都では、所得水準は他都道府県よりも高位に位置づけられるものの、労務費、建設費をはじめとする物価高に人口流入による需要増が加わり、住居費などの生活コストが急激に上昇している。マンション購入時に夫婦がペアローンを組まなければならないなど、子供を産むための資金的余裕に欠くことが想定される。
ただし、人口の自然増減を左右する出生率が低位にとどまっても、東京都をはじめとする都市部は周辺エリアから人口流入が期待できる。いわゆる人口の社会増減への依存ともいえるのだが、周辺地域から人口を奪うことで、都市機能の維持を担う人材の確保を可能とする戦略だ。
半面、地域部においては、たとえ出生率が高位となったとしても、せっかく産んで育てた地域の人材が、学校卒業後に都市部に流出してしまうことが想定される。このように、地域部では人口減少・少子高齢化が一層進行し、地域企業の人手・後継者不足が深刻化することは疑う余地もない。
そこで金融庁では、こうした課題に対応しつつ、地域経済が持続的に発展していくため、地域金融には、地域企業を資金繰り支援などで下支えすることにとどまらず、次の要件を要請することとした。
- 内外のプレイヤーと連携しつつ、中堅・中小企業による研究開発や設備投資、事業買収などを、戦略面・ファイナンス面で後押しし、成長につなげること
- 企業のM&A・事業承継や事業再生、経営人材確保、DXを支援すること
- 官民連携のまちづくりへの参画などを通じ、地域課題の解決に資すること
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