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  • 2022/08/02 掲載

就活の夏インターンが採用直結へ、“新ルール”の全貌と注意点

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大学生が夏休みに突入するとともに、大々的に企業のインターンシップが始まり、大学3年生は本格的に将来のキャリアを考え始める時期となった。政府は、2023年よりインターンシップでの評価を採用選考に活用することを認める方針に転換しそうだ。こうした方針によって、就職活動の時期がますます早まる、勉強の時間が減る、格差が生じるといった懸念の声も多く出ているが、転職支援のプロである筆者の懸念は“別”にある。政府の方針を振り返りながら、学生に向けてインターンシップでの注意点を解説する。

執筆:シニアジョブ 代表取締役 中島康恵

執筆:シニアジョブ 代表取締役 中島康恵

50代以上に特化した人材紹介、人材派遣を提供するシニアジョブ代表取締役。1991年、茨城県生まれ。少年~学生時代はサッカーに打ち込み、J1のユースチームで活躍。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓った。売上前年比が最高で300%に及ぶ成長を続け、現在に至る。専門紙を中心にシニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中。

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夏インターンはいよいよ採用直結に、就活生が注意すべきことは?
(Photo/Getty Images)

就活が実質スタート? 大学3年生の夏

 大学3年生の夏休みは忙しい。企業のインターンシップが大々的に始まるからだ。その前から準備している学生もいるが、学生と企業の最初の接点が「大学3年の夏」であることが多くなっている。

 今年6月、政府はインターンシップに参加した学生の評価を、企業が採用選考に利用することを認めた。これでさらにインターンシップ参加の重要度が高まると、焦りを感じている大学生もいるかもしれない。

 もっとも、政府が認めた方針の対象は、2025年卒業する学生、つまり現大学2年生が3年生になった時からとなりそうなので、現大学3年生(2024年に卒業予定の学生)には適用されない。とはいえ、インターンシップはもう実質的に新卒採用選考の過程の一部となっているため、今すぐ政府の方針に該当しないだけでは、安心できないだろう。

 政府が示した「インターンシップ推進に当たっての基本的考え方」では、インターンシップ評価の採用選考利用についてだけでなく、インターンシップの類型や、インターンシップ中のハラスメントなど細かく踏み込んだ内容を示している。今回は、企業の採用に深く関わる人材サービス提供者の立場から、特にインターンシップに挑む学生に、注意すべき点を示したいと思う。

政府がインターンシップのルールを大きく見直した…詳細は?

 政府の方針を整理しよう。まず、この“新ルール”が対象となる時期は、前述のとおり、現大学2年生が3年生となる来年、2023年となりそうだ。正確には、2023年に大学3年である学生の夏休みからだ。これは方針の中で「(卒業・終了前年度の)長期休暇期間中」をインターンシップの開催時期としているためである。ただ、大学の教育課程の一部に盛り込まれ、単位が得られるインターンシップについては大学3年生となったタイミングから対象となる可能性がある。

 また、これまで一般的にインターンシップと呼ばれてきたいわゆる「学生のキャリア形成支援に係る産学協働の取組」の4つの類型について、タイプ3、4のみがインターンシップである認定された。つまり、下記のうち、評価を採用に利用できるのは、タイプ3、4のみで、タイプ1、2は利用できない。


 タイプ1の「オープン・カンパニー」は、1日などの短期間、就業体験がなく、会社説明を中心に行われるものだ。タイプ2の「キャリア教育」は、教育プログラムを中心に数日から長期間行われるもので、就業体験は問われない。たとえ、5日以上の期間があっても採用には使用できない。

 タイプ3の「汎用的能力・専門活用型 インターンシップ」は、数日以上の就業体験である。これが採用に利用できる基本的なインターンシップとなる。タイプ4の「高度専門型 インターンシップ」は、高度な専門性を持つ大学院生などが対象となる試行中のプログラムである。今後の判断によっては対象ではなくなる可能性もある。

 具体的に、採用に活用できるタイプ3の「汎用的能力・専門活用型 インターンシップ」の定義は以下のとおりとなっている。

  • 就業体験が必須で、インターンシップ実施期間の半分を超える日数を“職場での就業体験”とする

  • 就業体験は、“職場の社員”が学生を指導し、インターンシップ終了後、学生に対しフィードバックを行う

  • インターンシップの実施期間は最低でも5日間以上、専門的な内容なら2週間以上の期間が必要

  • 開催時期は、学部3年・4年ないし修士1・2年の長期休暇期間(大学の単位となる場合を除く)

  • インターンシップを採用に活用することを含めた、インターンシップの情報をホームページ(HP)等で公開する

 諸条件を整理すると、「職場での就業体験」が重視されていることがわかる。時期は大学3年の夏休み以降、1週間の平日が丸々埋まる以上の期間が必要とされている。学生への指導やフィードバックも「職場の社員」が強調されているあたり、説明や研修、レクリエーションなどではなく、実務の体験に重きが置かれている現れだろう。

 思った以上に細かい諸条件が示された今回の方針を受け、さまざまな声が上がっている。それは企業にとっても、大学にとっても、学生本人にとっても、負担が感じられるからだ。大学と学生にとっては、悩ましい問題だ。こうした方針によってインターンが事実上の選考と化し、参加による格差が生じたり、インターンシップ開始前から情報収集や応募で時間を割かれ、学業に影響が出たりしかねない。

 首都圏の学生が首都圏の企業のインターンシップに参加するのはともかく、地方の学生はどうするのか。最低限の5日間を効率よく詰め込んでも夏休みに参加できる先はせいぜい8社で、そうした機会の問題や、そもそも長い期間を強いられる負担の問題がある。

 政府はインターンシップ等を円滑に進めるため、さまざまな施策を検討しているが、どれも若干ずれた印象や新たな利権の種になりそうだと感じる。たとえば、『大学側と企業側のニーズのマッチング等を行う専門人材(コーディネーター等)の育成・確保」を推進していくこと』や、『基準を満たすインターンについて「募集要項に産学協議会基準準拠マークを掲載可」とすること』などである。

 さらに、私は、インターンシップの採用への活用方針から、ハラスメントや「差別」が生じるのではないかという懸念を強く持っている。

【次ページ】インターンシップでハラスメントや差別?就活生は何に注意すべき?

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