• 2025/07/31 掲載

ストレス減る20代、増える40~60代…267万人のデータで見る年代別の「ストレス格差」

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ストレスチェック研究所を運営するドクタートラストは、2024年度に同社のストレスチェックサービスを受検した約56万人のデータを分析し、年代別のストレス傾向やハラスメントの実態、待遇面の変化などを公表した。ストレスチェック制度は、2015年以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が法律で義務づけられているもの。2019年度から集めていた267万人超の経年比較を通じて、働く人々の意識と職場環境の変化が明らかになっている。
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2024年度、累計267万人超のストレスチェックデータを分析

要点解説:調査結果のポイント

 今回の調査で最も顕著だったのは、60代における高ストレス者の増加傾向である。2024年度の高ストレス者率は8.1%で、2019年度から1.9ポイント上昇した。

 他年代と比べても増加幅が大きく、定年引上げなどの制度変更が影響している可能性がある。高齢層の労働参加が進む一方で、新たな働き方への適応や業務負荷への不安がストレス要因となっているとみられる。

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60代の高ストレス者は6年で1.9ポイント増加。高齢層にストレスが集中しはじめている実態が浮き彫りに ひと目でわかるグラフをチェック

 「職場でハラスメントを受けている」と回答した割合は5.5%で、前年度(5.7%)からやや減少したものの、大きな改善は見られなかった。

 厚生労働省の調査では、6割近い企業が過去3年以内にパワーハラスメントに関する相談を受けたと報告しており、現場とのギャップがある可能性も示唆される。従業員のエンゲージメントや組織の信頼性を維持するためにも、ハラスメント対策の強化が求められる。

 前年度と比較して最も改善が見られたのは、「自分の仕事に見合う給与やボーナスをもらっている」との設問で、2.9ポイント増加した。2019年度からは8ポイント以上の上昇となる。

 また、「意欲を引き出す教育が行われている」(+2.6pt)、「従業員の意見が聞かれている」(+2.2pt)など、キャリア形成や職場への参加意識に関する項目でも良好回答が増加した。

詳細解説:若年層の高ストレス者は減少、40代以降は上昇

 2019年度から2024年度にかけての6年間で、20代の高ストレス者率は2.7ポイント減少、30代は0.3ポイント減少した。一方で、40代と50代はいずれも1.0ポイント、60代は1.9ポイント上昇した。

 全体としては13%台を維持しているが、年代ごとの傾向には明確な差が見られる。特に40代以降では、職責の増加やライフステージの変化がストレスの背景にあるとみられる。

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20代・30代ではストレスが減少、40代以降は増加。“ストレス格差”が年代間で広がっている

 不良回答(=ストレスチェックにおいて「ストレスが高い」と判定される回答)の割合が最も高かった設問は、「一生懸命働かなければならない」だった。上位には、仕事の量的・質的な負担に関する設問が集中している。

 ストレスチェックでは、こうした設問に「そうだ」「まあそうだ」と答えると、高ストレスと判定される仕組みになっている。ただし、これらの回答には、単なる負担だけでなく、仕事への熱意や責任感が含まれている場合もあるため、一概にネガティブとは言い切れず、回答の背景や文脈を踏まえた慎重な解釈が求められる。一方で、ハラスメントに関する設問では、不良回答の割合が最も低かった。

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「一生懸命働かなければならない」が最多。不良回答は“働きすぎ”や“過重負担”に集中している

 2024年度のストレスチェック受検率は88.7%となり、過去最高を記録した。2019年度以降、受検率は年々上昇しており、企業による制度浸透の努力がうかがえる。ただし、依然として約11%は未受検であり、時間的制約や心理的な抵抗感が背景にあるとみられる。ストレスチェックの意義を従業員に伝え、安心して受検できる体制づくりが今後の課題となる。

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受検率は過去最高の88.7%に到達。高ストレス者率は6年連続で13%台が続く

良好回答の増加傾向、組織側の姿勢変化も影響か

 全80項目中、前年度比で1ポイント以上良化した設問は21問、悪化した設問は3問にとどまった。6年間でみると、良好回答は継続して増加しており、待遇や職場環境への改善努力が数値として表れている。給与や育成への投資が、従業員満足やエンゲージメント向上に結びつきつつあることが示唆される。

 ストレスチェックの結果からは、待遇やキャリア支援に関する満足度は上昇傾向にある一方で、働き盛り以降の年代におけるストレス増加という課題が浮き彫りとなった。

 今後は定年延長や再雇用の制度変更に伴うストレス対応、さらには業務負荷とやりがいのバランスをどう取るかが、企業の持続的な成長に向けた重要なテーマとなる。

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