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- 2023/06/16 掲載
製造業の4つのジレンマ、乗り越える「人を超える自働化」「人と機械の高度協調」とは
Seizo Trend創刊記念インタビュー
複雑な社会課題を「人が活きるオートメーション」で解決
オムロンは2022年3月、2030年をターゲットとする長期ビジョン「Shaping the Future 2030」、2022年度(2023年3月期)~2024年度(2025年3月期)の3カ年の中期経営計画を発表しました。この中で「人が活きるオートメーションでソーシャルニーズを創造し続ける」ことを掲げています。オムロンは1933年に創業しましたが、当時から一貫して企業の存在価値は世の中にどう貢献できるかにあると考えてきました。現在の長期ビジョンでは、事業を通して世の中の社会的課題を解決して経済価値、社会価値の両方を創出することを目指しています。
そして、変化の激しい社会環境の中で生まれる社会的課題の中から、オムロンでは「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」の3つを、事業活動を通して解決すべき社会的課題としています。
製造業の地殻変動、直面する「4つのジレンマ」
このうち、私どもインダストリーオートメーション事業(IAB:制御機器事業)が担当している製造業のお客さまは、かつてない「地殻変動」の中でさまざまな課題に対峙されていると日々肌で感じています。IABでは2022年から「オートメーションで人、産業、地球の豊かな未来を創造する」というビジョンを掲げ、そうした課題を解決できるソリューションを提供することに取り組んできました。地殻変動の要素について、私たちは「製造業が直面する4つのジレンマ」が根底にあると考えています。具体的には「資本生産性と柔軟性の両立」「経済合理性と環境還元の両立」「技術進化と人の習熟の両立」「労働生産性と人の尊厳の両立」の4つです。
まず、「資本生産性と柔軟性の両立」という観点は、これまでの自動化による大量生産での生産性の追求に加え、人材不足がより深刻化する中で従来は人手に頼っていた器用な作業にも柔軟に対応できる自動化を進めなければいけないという点です。
次に「経済合理性と環境還元の両立」。現在、脱炭素などの環境還元を実現できないことが経営リスクに直結する時代ですが、それを重視して経済合理性を犠牲にすることはできません。経済合理性と環境還元の2つをどう両立させていくかが2つ目のジレンマです。
続いて「技術進化と人の習熟の両立」です。完全自動化が難しく、人の作業に頼らざるを得ない労働集約型のものづくりの現場でも、AI(人工知能)やロボットなどの高度な技術の実装が進んでいます。ただ、労働者の減少と高度なスキルを持つ技術者が不足する中で、進化した技術と、それを使いこなす人の習熟曲線のトレードオフをどう解消できるかは、多くの製造現場が直面している課題です。
最後に「労働生産性と人の尊厳の両立」という観点です。私自身も入社時の研修で製造ラインに入った経験がありますが、「不良を出せない」というプレッシャーは、かなりの精神的苦痛を伴うと実感しました。これからの企業のあるべき姿勢として、今までのように生産性一辺倒ではなく、人の働きがいや尊厳に寄り添う「人権デューデリジェンス」の要請にも応えていく必要があります。
前半の2つの要素が、資本集約型のものづくりに見られる傾向です。また、後半の2つの要素は、人が介在する労働集約型のものづくりの現場に多く見られると思います。こうした、ものづくりの高度化と社会的要請や社会的課題が複合的に重なって複雑化していることが、まさしく今起きている地殻変動だと言えるのではないでしょうか。
4つのジレンマは、今後10年、日本、ひいてはグローバルの製造業が対峙していく課題であり、それをどう乗り越えていくのかが私たちオムロンのミッションだと考えています。 【次ページ】資本集約型のものづくり現場では「人を超える自働化」
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