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春・夏・冬の長期休暇中に発売される「青春18きっぷ」は、廃止の噂が流れることは多くとも、現在も販売が続いている。国鉄時代から存続しているこのきっぷは、普通列車の運行形態や列車ダイヤ、JRの企業としてのあり方が変化を続けても、その販売が途絶えることはなかった。2024年の夏も、発売直前に廃止の噂が流れたが、最終的には発売された。なぜ、青春18きっぷは長きにわたり販売され続けているのだろうか。
なぜ? 人気の衰えないJRの「青春18きっぷ」
夏前、「青春18きっぷ」が発売されるかどうかについて、さまざまな憶測が飛び交っていた。春に販売された時点では、夏も発売されるのかどうかがわからなかったからだ。結局、2024年6月18日に発表になり、騒動は収まった。
青春18きっぷとは、JR全線普通列車乗り放題のきっぷである。5回分が1枚に収められており、乗車する際に改札で日付入りのスタンプを押してもらうことで、使用を開始することができる。
普通列車や快速列車なら、自由席は乗り放題、指定席も指定券を購入すれば乗車でき、かつJR東日本にある普通列車グリーン車も、グリーン券を購入すれば乗車することが可能だ。
値段は1万2,050円。1日あたり2,410円だ。東京駅からとなると、東海道本線では吉原駅、中央本線では塩崎駅、東北本線では矢板駅まで行けば、元が取れてしまう。普通列車だけでも、3時間はかからないようなところばかりである。
当然ながら、このきっぷを1日使えば、それなりの距離を移動することができる。近年では普通列車は乗り換えが多いものの、速達性が高まっており、利便性は向上している。
そんな状況ゆえに、高い人気であり続けているきっぷであるが、一体何のために生まれたのだろうか?
「おトク」なフリーパスが生まれた背景とは?
青春18きっぷは、「青春18のびのびきっぷ」として1982年3月に発売が開始され、1983年春から現在の名称に変更、1984年春から5回分1セットとなった。
この時代は、長距離の普通列車、それも客車による列車が各地に残っていた。通勤・通学、そのほか用務で乗る人のための列車ではあったものの、休暇の時期にはこれらの列車に人が乗らなくなる。そこで、空気輸送の列車に安くてもいいから人を乗せたい、という趣旨で始まったのだ。
同時期には、高年齢層の夫婦向けにグリーン車乗り放題きっぷ「フルムーン夫婦グリーンパス」、30歳以上の女性グループ向けに特急も含めて乗り放題になる「ナイスミディパス」が販売された。これらの乗り放題きっぷには利用可能期間があり、特急の繁忙期は利用できなかったという。
普通列車の閑散期に利用できるのが「青春18きっぷ」、特急列車の閑散期に利用できるのが「フルムーン夫婦グリーンパス」、「ナイスミディパス」であり、経営の厳しい国鉄の増収のために生まれたのだ。
この中で青春18きっぷだけが、利用者の条件をつけないものとして発売されていた。ほかのフリーパスは、高齢者夫婦や女性グループなど条件が厳しく、また、新幹線や特急の利用制限が細かかったため、利用しにくいものとなりなくなっていった。
国鉄での増収策として生まれた3つのフリーパスが、時代と環境の変化で利用しづらくなり、生き残ったのが「青春18きっぷ」だけということである。
【次ページ】青春18きっぷが生き残った「納得の理由」
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