- 2026/06/09 掲載
「JAL化」か「ANA支配」か…実質赤字スカイマーク、“80歳新社長”衝撃人事の裏側(2/2)
連載:北島幸司の航空業界トレンド
新社長“異例”の人選に見る「JAL対ANAの代理戦争」
今回の人事で特徴的なのは、「航空会社経営経験者」への回帰である。次期社長候補には、株主総会を経て兼松とフジドリームエアラインズ(FDA)の社長経験者である三輪 徳泰氏が据えられる。しかしながら、三輪氏は現社長の本橋氏より30歳年齢が高い80歳である。この異例の人選の背景には、社長経験の長さこそが現在のスカイマークに必要という判断があった。
さらに注目されるのは、これまでにない「JAL対ANA」の構図である。筆頭株主となった鈴与グループのFDAは、歴代経営陣を含めJAL出身者が多く、FDAはJALとのコードシェアを進めている。一方、スカイマークは再建時にANAホールディングスから出資を受け、現在もANAとの協調関係を維持している。
つまり今後のスカイマークは、JAL系色を強める鈴与・FDA陣営と、ANA資本の間で舵取りを迫られる。羽田発着枠、機材調達、人材確保など、あらゆる局面で両陣営の思惑が交錯する可能性があり、スカイマークの生き残り戦略は“JAL対ANAの代理戦争”の様相も帯び始めている。
鈴与側としては、「銀行型管理経営」から「現場型経営」へ舵を切る必要性を感じた可能性が高い。さらにFDAは、高収益と言われる羽田路線を持たない地域航空会社ながら高い定時性とブランド維持で評価を受けてきた。
この先導入が始まろうとする国内線燃油サーチャージもFDAは2011年に日本初導入する先見性があった。スカイマークに対しても、過度な価格競争から距離を置き、収益性と独自性を両立する方向へ転換する狙いが見える。
単なる社長交代ではない「鈴与の思惑」
日本の定期航空会社の輸送力を2024年の有償旅客キロ(RPK)で比較すると、国内シェア75%を超える大手2社を別格として、スカイマークはピーチの107億に次ぐ86億を記録する国内第4位の位置にいる。すぐ背後にはZIPAIR Tokyoが77億で迫り、スカイマークの地位は揺らぎ始めている。また、FDAの13億を加えたとしても99億であり、第三極には届いていない。スカイマークは2030年度に売上高1,690億円、営業利益140億円を掲げる。ただ、その前提となるのは、「格安航空会社」から「特定既存航空会社」へ脱却し、さらにどのような価値を提供する会社になるのかというブランド再定義である。
今回の経営刷新は、単なる社長交代ではない。鈴与グループがFDAとともにスカイマークを“再建企業”から“成長企業”へ変えられるか。その背後では、JAL系人脈とANA資本という日本の航空業界の二大勢力が静かにせめぎ合っている。経験者社長への回帰は、回答を導き出す覚悟の表れでもある。
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