- 2026/05/20 掲載
座席はJAL優位だが、なぜ儲かるのはANA? 最高益の裏にある国際線争い「本当の勝者」
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ダイヤモンド・オンラインでの連載、ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
ともに過去最高益、競争は「質の時代」へ
ANAとJALが、国際線長距離路線の機材刷新で火花を散らしている。ANAは、主力中型機のボーイング787-9に最新ビジネスクラスシート「THE Room FX」を導入することを発表。一方のJALは、2024年に導入を開始した最新大型機、エアバスA350-1000を長距離路線の新たな大黒柱に据えて、就航路線を拡大している。
機体サイズこそ異なるが、両社が現在「一押し」とするこれら最新機材の客室スペックを比較すると、今後の日本の航空サービスの方向性が見えてくる。さらに興味深いのは、機材競争ではJALが一歩先行する一方で、収益面ではANAが依然として高い水準を維持している点だ。
2026年3月期決算では、ANAホールディングスの売上高は2兆5,392億円(2025年3月期比12.3%増)、営業利益は2,174億円(同10.6%増)、純利益は1,690億円(10.5%増)となり、いずれも過去最高、引き続き高水準の黒字を確保した。一方、JALは売上高2兆125億円(9.1%増)、EBIT(財務・法人所得税前 利益)2,180億円(26.4%増)、純利益1,376億円(28.6%増)と、こちらも過去最高益を達成している。
つまり、両社とも“好調だからこそ大型投資ができる”状態にある。その上で現在の競争は、単なる利益競争ではなく、「どのような顧客を、どの単価で運ぶか」という質の競争へ移っている。
【ビジネスクラス】共通点は「ドア付き」、両社の勝負所は?
両社のビジネスクラスにおける共通点は「ドア付き個室」の採用である。プライバシー重視の流れはもはや世界標準となった。ANAが2026年夏に787-9に導入する「THE Room FX」は、777-300ERで高い評価を得た「THE Room」の思想を継承している。機体幅がエアバスA350に比べて約12センチメートル狭い787に合わせて設計を最適化しながら、フルフラット時の快適性を維持している点だ。リクライニング機構をあえて無くし、座面がスライドしてベッドになる構造を採用することで、限られたスペース内に広い面積を確保している。
一方、JALのA350-1000は、機体そのものの余裕を武器にする。シートにはヘッドレストスピーカーを世界初搭載し、静粛性や湿度、与圧性能も含め、“飛行機全体”で快適性を高めている。運航開始からすでに2年半近く経過しており、その評価は高い。
つまりANAは「新設計の座席空間」で勝負し、JALは「機材性能を含めた総合完成度」で勝負している構図だ。
【プレミアムエコノミー】「思想の違い」が色濃く出るクラス
プレミアムエコノミーにも両社の違いが色濃く表れる。ANAは2-3-2配列の座席で大型パーティションを導入し、中型機でも個室感を演出する方向へ舵を切った。シートピッチではJALに及ばないものの、深いリクライニングで快適性を補う戦略だ。対するJALは、2-4-2配列の座席で大型機の余裕を生かしたシートピッチに加え、電動リクライニングとバックシェル構造を採用。後席に気兼ねなく倒せる構造は、長距離フライトでの精神的快適性に直結する。
ANAが「限られた空間の最適化」を追求しているのに対し、JALは「大型機の余裕」を全面に押し出している。 【次ページ】【注目】「1人当り単価」はどちらが強い?
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