- 2026/06/09 掲載
「JAL化」か「ANA支配」か…実質赤字スカイマーク、“80歳新社長”衝撃人事の裏側
連載:北島幸司の航空業界トレンド
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する記事や連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。世界の航空の現場を取材し、内容をわかりやすく解説する。テレビ、ラジオの出演経験もあり、航空関係の講演を随時行っている。ダイヤモンド・オンラインでの連載、ブログ「Avian Wing」の他、エアラインなど取材対象の正式な許可を得たYouTube チャンネル「そらオヤジ組」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。
売上「過去最高」と経常益「3.8倍」の裏にある厳しい実態
2026年3月期の事業収益は2025年3月期比1.4%増の1,104億円となり、過去最高を更新した。有償旅客数は799万人と微減だったものの、平均単価は2.9%上昇し、単価重視戦略が一定の成果を挙げた形である。しかし、その裏側ではコスト増が急速に進む。燃油費、円安、インフレ、政府支援縮小、保安料引き上げ、人件費上昇など、航空会社を取り巻く環境は一段と厳しさを増している。営業利益は前期同様18億円(1.4%減)を確保したものの、政府支援金を差し引けば実質赤字となる。純利益で見れば23.7%減となり、厳しい事業環境への対応力が改めて問われる内容となった。
本橋社長は質疑応答の中で、自らの体制について「スピード感や戦略性、株式市場への発信力が足りなかった」と率直に認めた。
特に注目すべきは、経常利益29億円(3.8倍)の大部分が為替差益によるものであった点である。さらに税引き前利益にはエンジン売却益も含まれており、本業の収益力が飛躍的に改善したわけではない。実際、2027年3月期予想では売上高1,208億円(2026年3月期比9.4%増)と増収を見込む一方、営業利益は15億円(16.7%減)へ減少する見通しである。
このため同社は、レベニューマネジメント強化、付帯収入拡大、燃油サーチャージ導入検討など、「規模拡大型」ではなく「高収益体質への転換」を中期戦略の中核に据え始めた。
“本橋社長”体制は失敗だったのか?
もっとも、本橋体制を単純に「失敗」と総括するのは適切ではない。本橋氏は銀行出身者として2005年に入社し、再建後の経営基盤整備を担ってきた。2024年に社長へ就任した際には、燃油高、円安、人材不足という三重苦に直面していた。その中で、同氏はコスト管理徹底と財務規律維持を推進。自己資本比率は28%まで改善し、新機材導入に向けた資金スキームも整理した。737-8型、10型導入のロードマップを描き、中期計画までまとめ上げた功績は小さくない。
また決算説明会では「航空業界は時間軸が非常に長い」と述べ、人材育成や機材更新が5年、10年単位で進む産業であることを強調した。この発言には、短期収益だけでは測れない航空会社経営の難しさが凝縮されている。
一方で、資本市場はそうした“準備”だけでは評価しない。株価は700円台から300円台へ下落し、投資家からは成長戦略の力強さ不足が指摘された。つまり本橋体制は、「守り」と「基盤整備」には一定の成果を残した一方、成長ストーリーを市場へ示し切れなかったのである。 【次ページ】新社長“異例”の人選に見る「JAL対ANAの代理戦争」
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