- 2026/07/06 掲載
2028年分いま注文…東京エレクトロンデバイス社長が語る「半導体バブル」の現在地(2/2)
頭を悩ませる、顧客への「価格転嫁」
こうした中、頭を悩ませるのが顧客への価格転嫁だ。「メーカーやサプライヤーから提示される値上がりした価格を、お客さまにお伝えしないわけにはいきません。当然のことではありますが、営業現場は難しい立場に置かれています」と宮本氏は率直に明かす。顧客側も昨今の価格上昇を織り込んで予算を確保しているはずだ。しかし、「直前の見積もりが想定を大きく超えてしまっている状況です」と宮本氏は説明する。
半導体市場全体が変化する中、エンドユーザーに近い立場になるほど、その変化に対する実感が薄れやすいという。想定以上の価格上昇に、驚きの声が上がることも少なくない。
加えて、価格が大きく変動する中で、どう購入していくべきかという問題も生じている。特に公共調達では予算が固定されているため、価格上昇によって入札が成立しないケースも出ているという。こうした状況を踏まえ、宮本氏は「お客さまにも現状を正しくご理解いただけるよう、適切にアプローチしていくことが大切だと考えています」と強調する。
半導体不足で求められる「東京エレクトロンデバイスの役割」
半導体を取り巻く厳しい環境の中、同社は技術商社として、調達や顧客への安定供給にどう対応していくのか。「部品の供給においては、お客さまにショートを起こさないことが大前提です。調達については、結局はサプライヤー側でのアロケーション(割り当て)の話になるため、われわれがやるべきことは、お客さまとのコミュニケーションをしっかり取ることだと考えています」(宮本氏)
顧客の生産計画を正確に把握し、適切なオーダー量をサプライヤーに伝えていく。直接営業する場合だけでなく、パートナー企業経由の案件でも、顧客との密接なコミュニケーションを重視する姿勢に変わりはない。
加えて、技術進化が早い半導体分野では、生産終了からの切り替え提案も重要な役割になっているという。「お客さまが使っている製品が生産終了と発表された場合は、確保しておくという方法もありますが、新しいものへの置き換えを積極的にご提案していかなければなりません」と宮本氏は説明する。
AI向け製品の生産が優先されることで、汎用品や旧世代品の供給が縮小するケースも増えている。こうした状況では、調達だけでなく、将来を見据えた代替案までを含めて支援することが、技術商社に求められる役割になっている。
ただ、ものづくりの現場では「変えたくない」という意識も根強い。「かつてはサーバを5~7年使い続けるのが当たり前で、今もその意識が残っているお客さまは少なくありません。私たちができることは、生産終了情報をいち早くお伝えし、代替提案につなげることに尽きます」と宮本氏は述べる。
ひっ迫する半導体市場。難しい環境の中で同社が示す基本姿勢は、できることを1つひとつ積み重ねていくことである。後編では、中期経営計画「VISION2030」で掲げる成長戦略とともに、2期連続の減収減益という厳しい環境下で新社長に就任した宮本氏の経営構想に迫る。
宮本氏が意識する「リーダーの役割4つ」
ここまで各事業の成長戦略について見てきたが、最後に宮本氏に、新社長としてどのような会社を目指すのかを聞いた。宮本氏は、リーダーに求められる役割を4つに整理する。業績向上による企業価値の向上、他社に対する優位性の創出、リスクへの備え、そして人材育成・後継者育成だ。「この4つを意識しながら、各事業と組織の両面から会社を成長させていきたいと考えています」と宮本氏は語る。
その先に見据えるのが、「どこにも比較されないユニークな会社」という姿である。技術商社やエレクトロニクス商社といった既存の枠組みだけでは語れない企業を目指したいという。
その実現に向けて宮本氏が重視するのが、新しいことに挑戦する企業文化の醸成と、メーカー機能のさらなる強化だ。
「私1人が新しい方向に進むだけでは意味がありません。現場のみんなが、新しいことに取り組むことを当たり前だと思える土台を作ることが大切です」と宮本氏は語る。
さらに、自社製品を持ち、海外でも競争できる企業になることも重要なテーマに位置付ける。技術商社とメーカーの両方の強みを持つ独自のポジションを確立することで、他社との差別化につなげたい考えだ。
だからこそ宮本氏が経営チームへ伝えているのが、目先の数字だけでなく、10年、20年先を見据えた経営のサステナビリティを意識してほしいということだ。「理念や企業文化は、言い続けなければ薄れてしまいます。私1人でやるわけではなく、従業員も含めてみんなで作っていくものだと思っています」と宮本氏は語る。
激変する市場環境の中でも、持続的に成長できる会社の土台を地道に作り続ける。それが宮本氏の経営構想の原点にあるようだ。
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