- 2026/07/29 06:50 掲載
なぜ今「セーフティアセッサ」の資格が注目か? 製造業の安全確保とキャリアの要点
なぜ機械安全を個人任せにしてはいけないのか
労働安全衛生法と作業環境測定法の改正法が2025年5月に公布され、2026年1月と4月には、機械の検査制度などに関する改正規定が相次いで施行された。労働者と同じ場所で働く個人事業者なども保護対象に加える措置が段階的に進み、企業が安全管理の対象とすべき範囲が広がっている。ただし、法令を守り、作業者に注意を促せば事故を防げるわけではない。厚生労働省系の栃木労働局がまとめた資料によれば、生産加工用機械に起因する「はさまれ・巻き込まれ」災害の約6割は休業1カ月以上となり、被災者の約5割を経験3年未満の労働者が占めるという。産業用ロボットを含む自動化設備でも、材料投入機に頭部をはさまれる事故などが起きている。
事故の典型例は、清掃や調整、異物除去、設備復旧といった通常運転以外の作業だ。現場では、機械を止めると生産ライン全体に影響するため、安全装置を無効化したり、動かしたまま作業したりする誘惑が生じる。作業者の不注意だけを原因にすれば、本質的な改善にはつながらない。
重要なのは、危険な部分に人が接近できない構造にする、カバーを開けたら機械を停止させるなど、設計や設備による対策を優先することだ。その判断には、危険源を洗い出し、リスクの大きさを見積もった上で、適切な安全方策を選ぶ知識が欠かせない。
そこで注目されているのが、機械安全の力量を第三者が認証する「セーフティアセッサ資格制度」である。安全を「気を付ける問題」から「設計して管理する問題」へ変える資格という位置付けだ。
セーフティアセッサの資格体系と試験内容
セーフティアセッサ資格制度とは、日本電気制御技術工業会(NECA)が2004年に創設した制度で、経済産業省の基準認証研究開発事業の下で、国際規格に基づく安全技術を理解し、製造現場に機械安全の考え方を根付かせる人材育成の仕組みとして構築された。中心となる資格は、セーフティサブアセッサ(SSA)とセーフティアセッサ(SA)だ。SSAは、基本的な知識と技能に基づいてリスクアセスメントを行う力量を認証する。これに対しSAは、リスクアセスメントに加え、具体的な安全方策まで立案できることを証明する資格である。
さらに上位には、特定分野の設計から検証までを担うセーフティシニアアセッサ(SEA)と、第三者の立場で機械の総合的な妥当性を確認するセーフティリードアセッサ(SLA)がある。2026年4月時点で、一連の制度の有資格者は3万6,035人に達した。
SAの対象として想定されるのは、機械設計者、生産技術管理者、安全管理者などだ。ただ、受験資格に制限はなく、SSAを取得していなくてもSAを直接受験できる。
試験は学科、論文、ケーススタディーの3科目で構成され、合計時間は370分に及ぶ。学科試験では国際規格に基づく安全技術について、選択問題、計算問題、記述問題などが出される。論文では技術者倫理などについて約400字で論じる。
ケーススタディーでは、機械の動画やイラスト、作業手順から危険源を見つけ、リスクを評価する。その上で、リスク低減策と対策後にも残る「残留リスク」を記述しなければならない。知識の丸暗記ではなく、現実の設備を見て判断する力が試されるのである。 【次ページ】合格率42.4%、試験で問われる本当の実力とは?
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