- 2026/07/29 06:50 掲載
なぜ今「セーフティアセッサ」の資格が注目か? 製造業の安全確保とキャリアの要点(2/2)
合格率42.4%、受験料は?試験で問われる「本当の実力」
SAの受験料は4万9,500円。安価な資格ではない上、学科試験160分、論文30分、ケーススタディー試験180分という長丁場だ。参考書や計算機も持ち込めない。2024年度のSA試験は、受験者483人に対して合格者205人、合格率は42.4%だった。過去数年も合格率はおおむね3~4割台で推移しており、受験すれば簡単に取れる資格とは言い難い。
難しさの原因は、覚えるべき規格や用語の多さだけではない。実務で求められるのは、「危ないところを指摘すること」ではなく、機械の使用目的や作業者の行動を踏まえ、どの程度のリスクがあるのかを説明することである。
その上で、安全方策には優先順位がある。まず、危険そのものをなくす「本質的安全設計方策」を検討する。それだけではリスクを十分に下げられない場合に、ガードやインターロックなどの安全防護を施す。最後に、取扱説明書や警告表示、教育などで残ったリスクを伝えるという流れだ。
現場では、コストや納期を理由に「注意書きを付ければよい」「作業者を教育すればよい」という結論になりやすい。しかし、人の注意力は一定ではない。作業に慣れれば省略行動も生じる。だからこそ、教育や警告より先に、構造や制御によって事故を防ぐ必要がある。
論文で技術者倫理が問われるのも、このためだろう。生産性、費用、安全性が衝突した際に、技術者は何を優先し、どのように説明するのか。SA試験で評価されるのは、規格を知っているだけの人ではない。安全に関する判断を引き受け、その根拠を言語化できる人材なのである。
転職だけではない、資格取得者の「本当の価値」
それでも、機械メーカーや設備メーカー、工場を持つユーザー企業では、取得者が価値を発揮できる場面が多い。新しい設備を導入する際には、メーカーが示した安全方策で十分なのかを確認しなければならない。複数の機械を接続すれば、単体では存在しなかった危険が新たに生まれる場合もある。
また、安全部門だけが資格を持っていても十分ではない。基本設計が固まってから危険を指摘すれば、大幅な設計変更や追加費用が必要になる。設計者、生産技術者、設備調達担当者が早い段階からリスクアセスメントを行うほうが、安全性と生産性を両立しやすい。
NECAによると、SA資格は2014年、厚生労働省が示した設計技術者や生産技術管理者向けの機械安全教育に対する有効性を公的に認知された。2019年には、SA資格制度の力量区分を基にしたJIS B 9971「機械安全に関する要員の力量」も制定された。資格制度は中国、韓国、台湾、ASEAN諸国にも展開されているという。
取得者に期待されるのは、社内の安全担当者になることだけではない。設計、製造、保全、経営の間で、安全について共通の言葉を使えるようにする役割だ。
ロボットやAIによる自動化が進んでも、機械をどの状態なら安全と判断できるかという責任は消えない。むしろ、人と機械が複雑に協働するほど、事故の可能性を事前に想像し、安全方策の妥当性を説明できる人材は貴重になる。
SAは華やかな資格ではない。しかし、設備を「動かせる人」から、安全な根拠を示して「動かしてよいと判断できる人」へ変わる。その差が、これからの製造業における技術者の市場価値を左右することになりそうだ。
生産・製造管理のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR