- 2026/08/24 06:50 掲載
スペースX「独走」では困る? NASAがマスクとベゾスを“あえて”競わせる納得の裏事情(3/3)
衛星通信で見えたベゾス氏の勝ち筋、「アマゾン連合」で対抗
Amazon Leoは家庭向けに加え、航空機や船舶向けにも通信を提供するなど、Starlinkと性質が近いブロードバンドサービスだ。TeraWaveはそのAmazon Leoが吸い上げた通信トラフィックを、地上の光ファイバー網に依存することなく宇宙で中継するバックホール回線として機能する。つまり、TeraWave単体でスペースXに対抗するというよりも、「Starlink対Amazon Leo+TeraWave」の構図が現れているといえるだろう。
ただし、Amazon LeoはStarlinkと異なり自前の宇宙輸送手段を持たない。このことが衛星展開の足かせとなっている。大量の衛星を軌道上に展開する衛星コンステレーション構想には、一定期間までに計画の衛星を打ち上げるという規制が設けられている。中でも米FCC(連邦通信委員会)は厳しい規制を課しており、アマゾンは2026年7月30日までにコンステレーション構成の50%にあたる1616機を稼働状態にする義務を負っていた。
しかし衛星の開発遅延や、契約しているロケットの開発スケジュールの遅延によって、2026年中期時点の配備数はわずか300~400機にとどまることが確定。これに伴い、アマゾンは2026年1月に、マイルストーン期限を2028年まで2年間延長することをFCCに申請した。
スペースXはこの申請に対し、自社に不利益となる「不当な特別処置」であると主張し、宇宙空間での干渉および衝突リスクの検証が不十分であるとして、FCCに対して申請の却下を強く要求する公式な反対意見書を提出した。最終的にFCCはアマゾンに救済措置を与える限定的な免除措置を決定したが、最終期限である2029年7月30日までに全3232機を完全稼働させる義務は変更していない。
スペースXはアマゾンを追い落とすことには成功しなかったが、機会があれば正面から競争相手の活動を制限する動きは躊躇しないというところだろう。
最大100万機 vs 5万機、宇宙データセンターをめぐる次の勝負
スペースXは100万機規模の「Starmind」という軌道上AIコンピューティング・コンステレーション構想で地上データセンターが抱える電力不足、冷却用の水資源制限、用地確保の遅れといった地球物理的制約を回避しようとしている。すでにFCCへの申請を進め、早ければ2027年には衛星の量産を開始、2028年にも衛星展開を開始すると表明している。
ブルーオリジンも同様に「Project Sunrise」という最大5万1600機のデータセンター衛星を展開する申請書をFCCに提出している。地球低軌道で衛星の太陽光パネルが常に太陽光を得られる軌道を選択して、安定的な発電を可能にする構想だ。TeraWaveと統合してAWSとも接続可能なシステムを目指す。
「最大100万機」と「5万機」ではかなり衛星数に開きがあるが、スペースXの100万機が本当にFCC規制などの面で実現可能なのかは不透明だ。許認可の際に規模が制限される可能性もあり、アマゾンは「この規模は裏付けに乏しい投機的なもの」という意見書をFCCに提出して意趣返ししている。ここでも「スペースX対ブルーオリジン+アマゾン」という図式が繰り返されている。
これまでスペースXは、月面着陸機(Starship)、通信衛星網(Starlink)AIデータセンター衛星(Starmind)の垂直統合メガコンステレーションで力押しをしてきた。一方でベゾス氏は、アマゾンを巻き込んで多企業・多層型のレイヤード戦略で対抗している。スペースXはある分野では先行しているものの、必ずしもあらゆる部分で盤石とはいえない。どこで逆転劇が起きうるのか注視する必要がある。
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