- 2026/08/21 06:50 掲載
習近平が賭ける「AI・ロボット大躍進」の重大リスク…派手な実演では隠せない“弱点”
連載:テック超大国・中国のゆくえ
1963年、中華人民共和国・江蘇省南京市生まれ。88年来日、愛知大学法経学部入学。92年、同大卒業。94年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)。長銀総合研究所国際調査部研究員(98年まで)。98~2006年、富士通総研経済研究所主任研究員、06年より同主席研究員を経て、現在東京財団政策研究所主席研究員。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授を兼務。主な著書に『中国不動産バブル』(文藝春秋)など。
日本と中国でここまで違う「産業の育て方」
実は、中国の産業育成政策は、日本を含む先進国の産業政策から多くを学んでいる。ただし、そのやり方は根本的に異なる。日本の産業政策では、補助金を支給するだけでなく、役所が業界のキーパーソンを集め、審議会や研究会を開催して、産業界が抱える問題や今後の展望を議論する。日本は民主主義国家であり、政府が予算を執行する以上、補助金の必要性や効果について一定の透明性が求められる。つまり、現場から上がってくる情報をもとに、政府が政策を設計するボトムアップ型である。
一方、中国では、5年ごとに策定される5カ年計画に国務院や国家発展改革委員会などが重点産業を盛り込み、必要な予算を財政部に要求する。地方政府や中央の個別省庁が特定の企業や産業を推薦することも多い。その結果、産業政策の策定過程は、中央政府、地方政府、各省庁のネゴシエーションやバーゲニングの場になりやすい。
中国型産業政策の最大の特徴は、政策決定と資金投入のスピードが速いことである。
補助金が「産業ブーム」を生み出す
太陽光パネルやEVが国家の重点産業になると、中央政府だけでなく地方政府も一斉に支援に乗り出す。補助金、税制優遇、土地の提供、融資などが集中し、たちまちブームが起きる。なぜブームになるのか。政府の補助金そのものが市場への強烈なシグナルになるからだ。「政府がこの産業を重点的に育成する」と分かれば、異業種からも大量の企業が参入してくる。
ここに日本と中国の産業政策の大きな違いがある。日本では企業が主役で、政府は市場をサポートする脇役である。それに対して中国では、政府が市場に強いシグナルを送り、企業の投資行動そのものを誘導する。
つまり、政府が市場メカニズムの一部を代替しているのである。
この背景には、旧ソ連から学んだ「社会主義計画経済」の発想がある。現在の中国経済は計画経済そのものではないが、国家が重点産業を選び、国家資金を集中投入して産業構造を変えていくという考え方には、その名残がある。
その結果、太陽光パネルやEVでは、巨額の補助金を背景に生産能力が急拡大した一方、十分な技術力や経験を持たない企業まで大量に参入した。過剰投資と価格競争が激化し、業界の秩序が崩れるという問題が起きた。
政府主導の補助金政策は、産業を一気に成長させる力を持っている。しかし、その反面、ブームをバブルに変えてしまう危険性もある。 【次ページ】最先端GPUなしで中国AIはどこまで戦えるのか
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