- 2026/09/29 06:50 掲載
走る、踊る、殴る…でも本当に働ける? 中国ヒト型ロボットの「派手さの先」の現実
連載:テック超大国・中国のゆくえ
1963年、中華人民共和国・江蘇省南京市生まれ。88年来日、愛知大学法経学部入学。92年、同大卒業。94年、名古屋大学大学院修士課程修了(経済学修士号取得)。長銀総合研究所国際調査部研究員(98年まで)。98~2006年、富士通総研経済研究所主任研究員、06年より同主席研究員を経て、現在東京財団政策研究所主席研究員。静岡県立大学グローバル地域センター特任教授を兼務。主な著書に『中国不動産バブル』(文藝春秋)など。
中国AIは「半導体の壁」を越えたのか
2025年1月、ディープシークは、最先端の半導体を大量に使わず、計算モデルや学習方法を改良することで、米国の先端AIモデルに匹敵する性能を実現したと発表した。この発表を受けて、米エヌビディアをはじめとする世界の主要半導体メーカーの株価は一時急落した。なぜなら、ディープシークの主張がそのまま事実ならば、高性能AIに必要とされる半導体の需要が大幅に減少する可能性があると考えられたからである。
しかし、世界の主要株式市場は比較的早く落ち着きを取り戻した。ディープシークのモデルが少ない計算資源で高い性能を実現したこと自体には一定の技術的意義がある一方、その開発過程や計算資源については、さまざまな疑問が指摘されたからである。
その後、米国司法省は、中国向けにエヌビディアの高性能AI半導体を搭載したサーバを不正に輸出した疑いで関係者を起訴した。また、台湾でも、エヌビディアや米スーパー・マイクロの関係者らが、高性能AIチップを搭載したサーバを中国へ不正に輸出した疑いで捜査・起訴されている。
これらの事件は、中国のAI開発が最先端半導体へのアクセスを必要としていることを示唆している。少なくとも、「中国のAIは最先端半導体を必要としない」と単純化するのは適切ではない。
中国AIを「偽物」とも「世界一」とも決めつけられない理由
こうした事情を考えれば、中国発AIの実力を改めて評価する必要がある。むろん、中国発AIのすべてを「偽物」とみなすのは間違いである。中国には優秀な数学者やエンジニアが数多く存在し、AIのアルゴリズムや計算効率を改善する技術力も確実に向上している。特に中国が強みを持っているのは、数学やアルゴリズムを活用した計算モデルの改良である。2026年のフィールズ賞でも中国出身の若手数学者が受賞者に選ばれるなど、中国の数学研究の水準は高い。AIの基礎となる数学・統計・アルゴリズムの分野で、中国が持つ人材の厚みは無視できない。
一方、中国には大きな弱点もある。それは最先端半導体の製造能力である。
米国、日本、オランダなどを中心とする経済安全保障の枠組みによって、中国への先端半導体製造装置や関連技術の輸出には厳しい制限が設けられている。中国最大の半導体受託製造企業である中芯国際集成電路製造(SMIC)は7ナノメートル級の半導体を製造できるとされているが、最先端の半導体メーカーと比較すると、製造効率や歩留まりなどに課題が残っている。
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