- 2026/09/28 06:50 掲載
メールもPCもない“大阪の石鹸メーカー”激変…「Claude Code」で基幹システム刷新も
連載:勝てる工場のつくり方~木村石鹸工業編~
東北大学大学院応用化学専攻修了。大手製造業を経て自治体に勤務し、大学での産学連携業務も経験。現在はビジネス分野を中心に取材・執筆。導入事例、記事広告、技術紹介、セミナー記事、SEO記事、法令解説記事などのほか、企業向けコンテンツ制作にも携わる。理系・技術職出身で、環境分野(脱炭素・廃棄物・水質)に強み。脱炭素アドバイザー(環境省認定)、公害防止管理者。著書に『ビジネス教養として知っておくべきカーボンニュートラル』(ソシム)。
前編はこちら(※この記事は後編です)
メールもPCもない…4代目が見た「アナログ工場の現実」
木村氏が木村石鹸工業に戻ったのは2013年。ITベンチャーでデジタルを活用した働き方が当たり前だった木村氏を待っていたのは、想像を超えるアナログな現場だった。「そもそもメールアドレスを全員が持っていない。PCも全員に配布されているわけではなく、予定は手帳と電話で確認する。当時はそんな状態でした」(木村氏)
しかし、ITに頼らずとも業務に大きな支障はなかったという。営業、開発、製造、管理の4部門がそれぞれの役割を担い、営業が受けた注文を開発、製造へと引き継ぐ仕組みができていた。綿密な打ち合わせや頻繁な会議はなく、全体で情報共有する機会も多くはなかったが、日々の業務は回っていた。
これから自社ブランド事業を本格化するには、対面や電話だけのコミュニケーションでは限界があった。将来的な生産拠点の拡大や、地方の零細企業として採用環境が厳しくなることも見据えれば、リモートワークにも対応できる基盤が必要だった。
こうした課題を踏まえ、木村氏は「デジタル化は絶対に必要」と考え、社内改革に乗り出した。
メールアドレス付与だけで超反発…デジタル化どう進めた?
しかし、改革は一筋縄では進まなかった。木村氏がまず着手したのは、社員全員がメールアドレスを持つこと。特に経理や財務などの数字を扱う管理部門から導入を進めようとしたが、社員からは強い抵抗があった。「メールアドレスを持ったらメールのやり取りをしないといけなくなる。私はしたくない」「近くにいるのだから会って話せばいい」「電話でもできる」。こうした声もあり、当初は半ば強制的に導入せざるを得なかったという。
カレンダー機能を導入した際も、「私は使いません」と利用を拒む社員も少なくなかった。そこで本人を説得するのではなく、その社員と親しい人に先に使ってもらい、予定を共有することで利用を少しずつ広げた。チャットも、営業で信頼の厚い若手社員に「電話よりチャットで連絡してもらったほうが楽です」と発信してもらい、現場に浸透させていった。
こうしてメールやチャットなどの活用が社内に定着すると、次の段階としてツールの統合にも着手。当初はサイボウズやチャットワークなど、目的に応じて複数のツールを使い分けていた。
しかしファイルはメールでやり取りし、更新のたびにファイル名を変えて送り直すなど、非効率な運用も残っていた。そこでメールやカレンダー、文書作成まで、業務環境をすべてGoogle Workspaceへ統一したのだった。
移行に対しては、「せっかく覚えたのに、また変えるのか」「もう2度と変えないと宣言してほしい」といった声も上がったという。
それでも木村氏は、移行計画の策定からレクチャー動画の制作まで自ら手がけ、動画を活用しながら半年をかけて全社への導入を完了させた。「結果的には、あのタイミングで移行させて良かったと思っています」と木村氏は振り返る。
こうして整備したデジタル基盤は、その後のAI活用や基幹システム刷新の土台となる。
現在では、生成AIの活用を推進。Google Workspaceに蓄積した部門間のチャットをClaude Codeで分析し、繰り返し発生する業務や属人化した仕事を洗い出すだけでなく、システム化すべき業務の提案や設計にも役立てている。
さらに挑んでいるのが、10年以上使ってきた基幹システムの全面刷新だ。外部に依頼すれば約3年、数千万円では収まらないとされるが、既存システムのマニュアルなどをAIに読み込ませ、Claude Codeとともに新システムを設計。在庫・出荷管理など影響の小さい領域から段階的に刷新を進めている。
AI活用は木村氏だけにとどまらない。全社のGoogle Workspaceとの連携にはGemini、より高度なエージェント機能が必要な場面ではClaude Codeと使い分け、マーケティングチームでもClaude Codeを導入。社内勉強会も定期的に開き、社員がまずAIに触れ、何ができるのかを知る機会をつくっている。
一方、同社は何でも効率化するわけではない。創業以来100年続く非効率な「釜焚き製法」は、独自の商品づくりを支える技術としてあえて守り続ける。「変えるべきもの」と「守るべきもの」を見極める姿勢こそ、アナログな町工場からAIを使いこなす企業へ変貌した木村石鹸工業の改革を支えているのだろう。
Google Workspaceに統一、「生成AI活用」も理由の1つ
同社では社内のチャットをプロジェクト単位ではなく、営業と製造、営業と管理部門など、部門間でやり取りする形で運用している。木村氏は、このチャットデータをClaude Codeで読み込み、部門間でどのようなやり取りが行われているのかを分析している。
その結果、見えてくるのは、同じやり取りが繰り返されている業務や、担当者に依存している仕事だ。AIは「この業務はシステム化した方が良い」「このやり取りは不要になる」と提案し、システムの設計書まで作成するという。
「優秀な情報システム会社のSEやコンサルタントと一緒に仕事をしているような感覚です」(木村氏)
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