- 2026/10/07 06:50 掲載
【比較】政府1兆円支援で激化する「宇宙」覇権争い、ispaceやQPSら4社「天国と地獄」
1兆円規模の支援など「政府も本気」の宇宙事業
宇宙ベンチャーを取り巻く政策では、研究開発への支援に加え、民間サービスを政府が購入する調達も進んでいる。月面探査の技術を確保し、地球を観測する能力を高め、衛星が安全に活動できる環境を整える…政府のこうした目的が、民間企業の事業機会につながりつつある。その柱の1つが宇宙戦略基金だ。2026年2月改定の基本方針は、基金創設から最大10年にわたり、総額1兆円規模の支援を目指している。2025年度補正予算までに基金規模は8,000億円となった。
ただし総額1兆円規模は支援の目標規模であり、全額が既に企業へ交付されたわけではない。技術開発への支援と、開発したサービスを買う政府調達は、役割を分けて捉える必要がある。
調達の動きも具体化している。防衛省の2026年度宇宙関係予算資料では、宇宙関係経費を契約ベースで約1,740億円計上し、民間の高分解能衛星画像の取得も掲げた。衛星コンステレーションの整備・運営事業も進む。これらは政策の規模を示す数字であり、今回取り上げる4社にそのまま配分される金額ではない。
4社の主戦場は3つに分かれる。ispaceは月面開発、アストロスケールは宇宙ごみ除去や衛星の寿命延長などの軌道上サービス、QPSとSynspectiveはレーダー衛星による地球観測だ。直接の競合だけでなく、資金を投じて宇宙インフラを築く企業として比較する意味がある。
ただし、採択や受注が増えても、すぐに利益と現金が増えるとは限らない。政策の追い風を受けた4社は、どこまで事業化を進め、回収までの時間をどう支えるのか。その差を決算から読み解こう。
【比較】4社の「黒字と赤字」の中身」
まず、表の数字は四半期、半期、通期が混在する。同じ期間の競争成績としては扱えない。補助金の計上区分も異なり、アストロスケールは営業損益に含める一方、QPSやSynspectiveは営業外収益に計上する。見るべきは、各社の黒字と赤字は何で生んでいるかだ。ispaceの2027年3月期第1四半期決算は売上高1.7億円、営業赤字64.0億円、純損失63.4億円。現金及び預金は257.0億円だった。月面輸送の開発負担に加え、米国での設計変更に伴う約37億円の減損損失が営業損失に含まれる。現金支出を伴わない損失もあり、赤字額をそのまま資金流出額にはできない。
アストロスケールの2027年4月期第1四半期決算は売上収益12.0億円、営業赤字27.5億円、純損失30.7億円。現金及び現金同等物は349.5億円に増えた。新株や転換社債による資金調達が寄与しており、資金の厚みと軌道上サービスの収益力は分けて評価したい。
QPSの2026年5月期決算は売上高38.0億円、営業赤字8.3億円ながら、純利益11.5億円を確保した。現金及び預金は212.5億円で、現金及び現金同等物は、定期預金130億円を除いた82.5億円。補助金や共同研究収入が利益を支えており、純利益黒字は衛星データ販売による営業黒字を意味しない。
Synspectiveの2026年12月期中間決算は売上高16.9億円、営業赤字33.5億円、純損失14.2億円。現金及び預金は162.1億円だった。補助金収入22.3億円が寄与し純損失は前年同期から縮小した一方、衛星製造などの投資活動では105.9億円を支出した。政策支援の効果と、衛星網を拡大する負担が同時に表れた決算である。 【次ページ】巨額受注しても安心できない「3つの理由」
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