- 2026/10/20 10:50 更新
火星衛星探査MMX「緊迫の134分間」の全貌、世界初に挑むJAXAの“綿密すぎる”作戦とは
1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。
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火星圏到着はいつ? それまでの流れ解説
MMXは日本がこれまで手掛けてきた中でも、最大級の大型かつ複雑な深宇宙ミッションだ。その最初の難関は、火星への軌道投入である。化学燃料を使ったエンジンの噴射による他の天体への軌道投入が成功すれば日本初の実績となる。川勝 康弘プロジェクトマネージャは金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入で発生したスラスタ(小型エンジン)の不具合を念頭に、「対策をしっかり打っていこうという方針で開発した」と述べた。
計画通りならば2027年中にMMXは火星圏へ到着し、往路の山場である火星周回軌道投入(MOI:Mars Orbit Injection)を迎える。往路モジュールは、主にMOIに必要な大増速を担うための強力なスラスタであり、打ち上げ時の総質量約4480キログラムのうち約1840キログラムもの推進薬を搭載している。
MOIの際、探査機はまず火星を周回する大きな楕円軌道へと投入される。続いて軌道の近火点高度(火星に最も近づく地点の高度)を上昇させるとともに、フォボスの公転軌道面と探査機の軌道面を正確に合わせるための軌道制御を行う。
MOI運用を無事に完遂した段階で、空になった往路モジュールは不要となり切り離される。探査機は大幅に軽量化され、以降のミッションは「探査モジュール」+「復路モジュール」からなる身軽な構成で実行される。
【世界初】フォボス観測の「巧妙な飛行方法」
フォボスは重力が極めて小さいため、その重力圏に完全に捕獲される「周回軌道」を維持することは困難だ。そのため、MMXは火星の重力に支配されつつ、フォボスと一定の距離(高度)を保って並走する「擬周回軌道(QSO:Quasi Satellite Orbit)」へと投入される。成功すれば、他の惑星(火星)の衛星を周回しているかのように飛行して詳細観測を行うのは世界初となる。
MMXは観測と運用の目的に応じて、フォボスから離れた安定性の高いものからフォボスに接近するものまで、高度が数段階で異なるQSOが計画されている。火星の陰に入って地球との通信が途絶するタイミングなどを見極めながら、地球との距離を短くして運用できる期間に探査活動を実施する計画だ。
採取や観測など「13の搭載機器」を詳しく解説
MMXの探査+復路モジュールには、2種類のサンプリング機構をはじめ、火星衛星の観測を担う機器から、ミッションの様子をハイビジョン映像で届けるカメラまで11もの科学ミッション機器が搭載される(図)。【次ページ】着陸から離陸までの「綿密すぎるシナリオ」
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