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  • 2023/04/26 掲載

金融庁が「読まない目論見書」にメス、例年と一味違う「プログレスレポート」の中身とは?

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金融庁は4月21日に公表した「資産運用業高度化プログレスレポート2023」で、投資信託の販売、管理におけるシステム面での効率化を業界側に求めました。投信を提案する際に金融機関が顧客に提供する目論見書については、現在は紙ベースやPDF形式が主流ですが、これを投資家と事業者の双方にとって使いやすいHTML形式へと移行するよう促しています。また、投信の管理などのシステムを取り扱うベンダーについて、大手事業者の寡占化が進んでいる現状を指摘。システム標準化などを通じ、健全な競争を促進すべきとの考えを打ち出しています。

執筆:金融ジャーナリスト 川辺 和将

執筆:金融ジャーナリスト 川辺 和将

元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」

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目論見書の「脱PDFとHTML化」、金融庁のプログレスレポート重要トピックを解説
(Photo:StreetVJ/Shutterstock.com)

目論見書の「脱PDFとHTML化」

 政府が3月に国会提出した金融商品取引法改正案では、紙ベースの情報提供の原則を撤廃し、販売資料のデジタル移行が各金融機関の判断に委ねられることになっています。

 移行策にルール上の強制力は生じないものの、金融庁は従来から求める「顧客本位の業務運営」推進の文脈で今後、デジタル技術を活用した顧客への情報提供の強化について各社に「自発的」な取り組みを求める考えです。

 今回のプログレスレポートでは、金融商品の提案現場におけるDXの一環として、現状では紙ベースやPDF形式での提供が主流となっている投信の目論見書についてHTML化を促す記載が盛り込まれています。

 まずは、目論見書の電子化をめぐる議論の経緯を振り返りましょう。

紙/PDFの目論見書は誰も読まない?

 そもそも目論見書は、ファンドの特色や運用実績、手数料、リスクなどのデータが記載され、よく投信の「説明書」のようなものといわれます。投信の営業における情報提供の要となるツールであり、その作成方法については投資信託協会の自主規則などで事細かに定められています。

 一方、情報量が多過ぎるため投資初心者の理解に役立たないという意見も聞こえます。ルールに基づいた交付が実施されているか監督する立場の金融庁でさえ「一応渡されるというだけで、実際にはほとんど誰も読んでいないのではないか」(金融庁中堅職員)と疑う向きもあります。

 時に不要論さえ囁かれるこの目論見書を、デジタル技術の活用により、初心者にもわかりやすい情報提供ツールとして生まれ変わらせよう――。金融庁内で足元、こうした機運が高まっているのです。

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目論見書の記載方法は投信協会の自主規制規則や細則で細かく定められている
(出典:投資信託協会「交付目論見書の作成に関する規則に関する細則」より)

 先述のとおり目論見書など販売資料については現行制度上、顧客の同意を得ない限り原則的に書面(紙)ベースで顧客に提供することが金融商品取引法で義務付けられています。

 政府は、新型コロナウイルス感染拡大に伴うDXの機運の高まりを受け、2021年末に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定。この中で、金融機関における情報提供の原則デジタル化や、わかりやすい情報提供の在り方などについて法改正を視野に検討を進める方針が掲げられました。

 重点計画の策定後、金融商品の販売資料におけるDXについては、首相の諮問機関である金融審議会傘下の市場制度ワーキンググループで意見交換が進められました。

 が、検討事項とされた「原則デジタル化」に関する議論は、やや紛糾気味に。各業態に固有の事情によってDXへの温度差が生じていただけでなく、紙ベースの情報提供を希望した場合に誰がそのコストを負担するかについてコンセンサスを得られなかったこともあり、結局は当初案の「原則デジタル化」ではなく、紙とデジタルの選択式という折衷案に落ち着いたという経緯があります。

 市場制度ワーキンググループの下部組織である顧客本位タスクフォースによる中間報告を踏まえ、政府は3月、金融商品取引法改正案を国会に提出。これにより、目論見書などをデジタル移行するかは、各事業者の経営判断に委ねられることになりました。

 とはいえ当初、政府が重点計画で目指していた原則デジタル化の主目的は、顧客にとっての利便性の向上や管理コストの抑制にあります。移行コストを厭う事業者がデジタル化に及び腰となれば、国内の投資家がDXの恩恵を受けられなくなります。

 そこで金融庁として、法令上のルールとは異なるプリンシプル(罰則のない原則や規範)のレベルで、事業者にデジタル移行を促す運びになったというわけです。 【次ページ】HTML化を「評価」する理由、「例年とは違う」プログレスレポート

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「ChatGPTで株価予測」が実現? 金融分野の生成AI最新動向

リラ教授とタン准教授がシミュレートしたのは、ニュース報道翌日の株価パフォーマンス。決算発表を考えてもらえれば分かるようにこれはいわゆる株価予測とは違うのですが(決算前に、どんな決算になるかを考えるのが予測ですね)、こんなクルードな方式でも15ヶ月間リターンが+250%も出たとのことで(取引コスト10bps)、しかもシャープレシオが3以上と、ちょっと驚きを通り越してしまいます。

おそらくは、時価総額のごく小さな銘柄にはいかにミスプライシングが残されているかということが発見なのでしょう。

想像に難くありませんが、そのパフォーマンスは時価総額下位10%の銘柄に集中しています。NYSEの時価総額下位10%といえば$100m以下。その多くはペニーストックで出来高のない日も多く、取引金額は多くて$1m。

さて、この手の計算と現実の間には、常に流動性の制約があります。寄りオンリーの売買で実際にいくら張れるかについて簡単な試算をしてみましょう。

日次取引額の25%が寄りでの約定と仮定し、その20%までならティックアップしないとすると、張れるのは日次取引額の5%です。対象銘柄全体で平均日次取引額が$300kあるならトレード可能額は$15k。そして時価総額下位10%に属する300銘柄のうち、出来高がありかつその日にニュースが存在するのが150銘柄だとすると、合計$2m強しか張れないことに。

ちなみに上記の150銘柄という前提は、論文に使われている観察サンプル数の15ヶ月間46402件にマッチしますが、実際にはマイクロキャップ銘柄についてニュースが存在する日が全体の半数もあるとはとても思えず、さらに制約がある可能性は高そうです。(時価総額100億円以下の会社では、決算すらほとんど報道されませんよね)

投資とは、良い会社を安く買うこと。このシミュレーションは「ニュースがポジティブかネガティブか」だけを見ていて「株価が安いか高いか」は無視していますから、バリュエーションを組み合わせたストラテジーに仕立て上げたときにどうなるかに興味がひかれます。そのうえで、日計りではなくせめて数ヶ月スパンで、かつ大型株でパフォーマンスが出せるようなものが出てきたときには必ずや実用化されるでしょう。

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