- 2025/11/25 掲載
サントリーにアサヒ…「やらかし連発」の飲料メーカー、陰で笑う「あの存在」とは
連載:大関暁夫のビジネス甘辛時評
株式会社スタジオ02代表取締役。東北大学経済学部卒。 1984年横浜銀行に入り企画部門、営業部門の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時にはいわゆるMOF担を兼務し、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。2006年支店長職をひと区切りとして独立し、経営アドバイザー業務に従事。上場ベンチャー企業役員を務めるなど、多くの企業で支援実績を積み上げた。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業などのアドバイザリーをする傍ら、出身の有名進学校、大学、銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆やコメンテーターを務めている。
ここにきて「やらかし連発」の飲料業界
この秋、ビール・飲料業界が揺れ動いています。事の始まりは、今年9月上旬に明るみに出た、サントリーホールディングス会長を務めていた新浪剛史氏のスキャンダル退任の件です。
新浪氏は、自身が個人輸入を人づてに頼んだアプリが、その手配人が逮捕されたことから新浪氏が依頼したものも違法なものではなかったのかとの疑惑が浮かんで、家宅捜索を受けたというのです。モノの存在が特定できず逮捕は免れたものの、事実を知ったサントリーは即刻、役員会で意思決定をはかり、新浪氏から辞任申し出を受ける形で退任に手続きを取りました。
実質的な解任とも言えるこの出来事ですが、極力組織へのダメージを抑えるための措置であったと思われます。サントリーが何より問題視したのは、自社がサプリメントを扱う企業であるということ。その企業のトップが、違法サプリメントの購入手続きを取っていたのではないかという疑惑の目を向けられたわけで、「捜査の結果を待つまでもなく、会長の要職に堪えない」と判断して実質更迭に動いたことは、迅速かつ明快であったと言えそうです。
サントリーが即座に「新浪切り」したワケ
ビールをはじめとした飲料商品は嗜好品であり、有名タレントを使っての派手なCM競争が展開されるなど、多額の宣伝広告費が投じられています。嗜好品の売上が企業イメージや商品イメージに大きく左右されるがゆえの、派手な宣伝広告戦略であるのです。一方で、企業不祥事の発生はそのブランドイメージを著しく損ない、商品の売上をもダウンさせかねない一大事です。サントリーといえば、長年にわたって就職人気ランキング上位に位置するなど若者層を中心として圧倒的な支持を得て、ブランド力では同業他社を圧倒してきました。日経リサーチが公表している、企業のブランド力を測定・分析する2025年版の「ブランド戦略サーベイ」でも、キリン・アサヒ・サントリー・サッポロ・エビスといったほかの飲料メーカーを差し置いて、トップ15入りを果たしています。
また同社は、老舗3メーカーがひしめくビール業界に後発参入し、ブランド力と斬新な商品開発力をもって、2008年にはサッポロビールを抜いてシェア第3位に躍り出る快挙を成し遂げてもいます。
そんなサントリーにとってブランド力の低下は最も避けたい事態であり、たとえ三顧の礼をもって社長に迎え業績を大きく伸展させた新浪氏であっても、瞬時に会長職を解いたのは、ブランドイメージの棄損を最小限に抑えたいとの思いの現れであったと言えるでしょう。 【次ページ】新浪ショックに続いた「アサヒショック」とは
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