- 2025/07/03 掲載
怒号飛び交った日産の「大荒れ」株主総会、経営再建に「懸念点しかない」と言えるワケ
連載:大関暁夫のビジネス甘辛時評
株式会社スタジオ02代表取締役。東北大学経済学部卒。 1984年横浜銀行に入り企画部門、営業部門の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時にはいわゆるMOF担を兼務し、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。2006年支店長職をひと区切りとして独立し、経営アドバイザー業務に従事。上場ベンチャー企業役員を務めるなど、多くの企業で支援実績を積み上げた。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業などのアドバイザリーをする傍ら、出身の有名進学校、大学、銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆やコメンテーターを務めている。
「大荒れ」に終わった日産株主総会
2025年3月期で6,708億円の赤字を計上し経営危機が叫ばれる日産の株主総会が、2025年6月24日に開催されました。株主総会では、イバン・エスピノーサ社長が業績悪化について陳謝し、回復に向けたリストラ策および再建計画を説明、株主の理解を求めました。しかし、株主からはエスピノーサ社長への解任動議をはじめ、経営陣を叱責する声を中心として手厳しい意見が相次ぎ、怒号も飛び交う荒れた株主総会となりました。
振り返ってみると、日産の経営危機が発覚したのは、2024年11月の2025年3月期中間決算発表でした。
同社は純利益で前年同期比9割減となり、世界の生産能力を2割削減してグループ社員9000人の人員削減実施を発表。同年12月には本田技研工業(以下、ホンダ)と経営統合に向けた協議を開始しました。しかし、日産のリストラ進行の緩さにしびれを切らしたホンダから日産の完全子会社化が申し出られ、日産がこれを拒否したことで、今年2月にあっさり破談となったことは記憶に新しいでしょう。そして3月決算で、6,708億円の巨額赤字を計上。4月にトップの交代を実施し、国内を含む世界7工場の閉鎖と約2万人の人員削減へ、リストラ策の積み増しを発表したのです。
再建計画にちらつく「ゴーン氏の亡霊」
今回の株主総会で株主からは、リストラ策に対する甘さを指摘する意見が続出したといいます。「Re:Nissan」と名付けられた再建計画は、1999~2000年にカルロス・ゴーンCEO(当時)が成功に導いた「リバイバルプラン」に酷似しているとの報道もあります。このリバイバルプランのスタート時である2000年3月期の日産の業績は6,843億円の赤字であり、今回はそれに近しい規模の赤字です。そして、リバイバルプランで示されたリストラ策の軸が、国内5工場の閉鎖と2万1000人の人員削減でありました。赤字規模とリストラ策の内容から、Re:Nissanはリバイバルプランとの類似性が指摘されているのです。
しかし、このリバイバルプランとRe:Nissanをよくよく比較してみると、重要な部分で相違点があることが分かります。
その違いを一言で表現すると、計画の具体性とスピード感というところです。リバイバルプランを公表した際にゴーン氏は、閉鎖5工場の具体名を明示し、当時としては常識外の「下請け解体」を宣言して、サプライヤーの半減という具体策の下での20%のコストカットを宣言しました。
そして、2000年度での黒字化、2002年度までに4.5%以上の営業利益率の達成と1兆4,000億円の有利子負債の半減という具体的数字目標を提示。「コミットメント」という言葉を使ってこの計画の達成を「約束」し、自身のクビをかけて再生に取り組むという強い姿勢を社内外に示したのです。リストラ策と並行して、エクストレイル、新型スカイラインなどのヒット車種を次々と送り出し、結果的に2000年度の黒字化実現を皮切りに、すべての目標を1年前倒しで達成してリバイバルプランは成功裏に収束したのでした。 【次ページ】否めない「ゴーン氏との力量差」
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