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  • 2024/02/06 掲載

【徹底討論】ステーブルコインに「固有の課題はない」、では何が妨げになっているのか

連載:ステーブルコインの実際

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金融業界の次なる変革のトリガーとして、ステーブルコインが注目されている。安定した価値を実現するように設計されたこの暗号資産は、個人から法人まで幅広い人々の金融取引に影響を与え、銀行ビジネスの未来も塗り替える可能性を持つが、日本で大きなうねりになっているとは言い難い。第1回に引き続き、Japan Open Chainファウンダー 稲葉大明氏やProgmat代表取締役 Founder and CEO 齊藤達哉氏、みずほフィナンシャルグループ 執行理事 デジタル企画部 部長 藤井達人氏、finoject 代表取締役 三根公博氏(モデレーター)らが、ステーブルコインがもたらす可能性と課題などを語り合った。

執筆:finoject 代表取締役 三根 公博、構成:山田竜司

執筆:finoject 代表取締役 三根 公博、構成:山田竜司

finoject 代表取締役 三根 公博
finoject代表取締役兼JPYC社外取締役。過去にbitFlyer社長およびJVCEA会長、Coincheck・Monex・ソニー銀行・SBIeトレード証券・松井証券・日本興業銀行等での経歴を持つ。金融業界におけるデジタルイノベーションの推進者。新たな挑戦を模索中。

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ステーブルコインの課題、地方創成やビジネスへどう使う?

ブロックチェーン技術を用いた地方創生の好例

三根公博氏(以下、三根氏):Web3の文脈からステーブルコインで地方創生を図ろうとする動きは、今後ますます増えそうですが、この点について考えを教えてください。

齊藤達哉氏(以下、齊藤氏):「ステーブルコインによる地方創生」というテーマの解像度を上げたほうがいいでしょう。テーマの意義と「置換が簡単」か、つまり「ホワイトスペース(ビジネスモデルの空白地帯)があるかどうか」が重要です。

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Progmat 代表取締役 Founder and CEO 齊藤 達哉
Progmat代表取締役 Founder & CEO。2010年三菱UFJ信託銀行入社。2016年にFinTech推進室を設立し、デジタル戦略を企画・推進。“シリアルイントレプレナー(連続社内起業家)”として、情報銀行基盤「Dprime」、デジタルアセット基盤「Progmat」、業界横断組織「デジタルアセット共創コンソーシアム」などを立ち上げる。2022年、複数の金融機関や取引所、ソフトウェア企業の出資による、デジタルアセット基盤事業の独立会社化を発表、2023年10月代表就任。特許登録7件。

 そもそも、地方創生はステーブルコインを中心に据えて成し遂げるものでしょうか? たとえば「外国人観光客向けにインバウンド決済をシームレスにすること」はニーズがありますが、それはクレジットカードでも可能です。

 また、「地域振興券」を彷彿(ほうふつ)させる地方創生の案件をみると、それは(分散型金融のスキームではなく)「地方公共団体の信用で運用する」という話であり、「ブロックチェーンでアドレスがどこでも移転できる」というような、移転の柔軟性は必要がないようなケースもあります。

 振興券がデジタルに代わる話ではなく、「誰でもアクセスでき、どこにでも送れるパーミッションレスブロックチェーンであること」でないと、本来的な価値が出せません。

 一方、ステーブルコインを含めたブロックチェーン技術を用いた地方創生のケースとして何があるのかというと、新潟県の山古志村のDAOのような例は意義があり、かつホワイトスぺースでしょう。

 さまざまな貢献に対して、何らかリワード(報酬)を与えたいという際に、今までの決済手段だと、柔軟に報酬が渡せず、報酬を提供する相手方が必ずしも日本人だとも限らないケースで、ステーブルコインは有効です。

 「特定のKYCされた人でなくても、そのコミュニティーに参加できます」という点が、一番意義があり、その際に使える決済手段を想定する場合には「パーミッションレスステーブルコイン」でないと、用をなしません。

 パーミッション型で運用するのなら、今までの法定通貨の決済でもできなくはありません。地方創生で意義を出すとすれば、ステーブルコインを用いる意義かつホワイトスぺースがあるという意味で、パーミッションレスで運用したほうが良いと思います。

プログラマビリティーでトークンエコノミーの仕組み実現

三根氏:ステーブルコインは、個人と法人のどちらに相性がよく、ヒットを狙えそうでしょうか?

藤井達人氏(以下、藤井氏):完全にユースケース次第という気がします。プログラマビリティー(コンピュータプログラムにより制御できる性質)を備えたステーブルコインが発行されて、Web3のさまざまな技術と組み合わせることで、そのトークンエコノミー(暗号資産などのトークンにより生まれる経済圏)と相性のいい仕組みを作れます。

 さらにブロックチェーンの持つトレーサビリティー(追跡可能性)を活用できるので、サプライチェーンファイナンスのようなB2Bの仕組みとも相性がいい点はよく指摘されます。

 ただ、法人間の仕組みでブロックチェーンベースのものを適用しようとすると、各法人がそこに参加して、今までの仕組みから切り替える必要がありますし、ブロックチェーンネットワークに参加するためにノードを立てる必要もあります。サービスの立ち上げには時間がかかるでしょう。

 その点を加味すると、ビジネスとして立ち上げやすいのは個人向けかもしれません。たとえば、先ほどの地方創生の一環として、「地域コインを電子マネーで運用する代わりにステーブルコインに替えてみる」という事例も現れそうな気がします。

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みずほフィナンシャルグループ 執行理事 デジタル企画部 部長
藤井 達人
IBMにてメガバンクの基幹系開発、インターネットバンキングのプロジェクト立ち上げ、金融機関向けコンサルティング業務に従事。 その後、マイクロソフトを経て、三菱UFJフィナンシャル・グループのイノベーション事業に参画し、フィンテック導入のイノベーションを担当。日本におけるフィンテックシーンの黎明期より携わり、邦銀初のアクセラレータプログラム「MUFG Digitalアクセラレータ」、メガバンク初の「銀行API」などの設立を主導。メガバンクにおけるデジタルイノベーション活動をリードし、フィンテック導入の礎を築いた。また、APIやブロックチェーンなどの新規事業などの立ち上げも行った。2019年よりKDDI/auに移籍し、auフィナンシャルホールディングスにて執行役員 最高デジタル責任者として新たなスマホ金融サービスの立ち上げを手がける。再びマイクロソフトにて業務執行役員 金融イノベーション本部長を経て、現職。2022年より日本ブロックチェーン協会 理事。
【次ページ】ステーブルコインの妨げになっているものは?

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