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- 2024/08/28 掲載
小池都知事3期目の目玉施策、「金融・資産運用特区」の3つの柱とは
小池都知事の3選勝利の背景にあった目玉施策
2024年7月7日に投開票が実施された東京都知事選挙。現職の小池百合子氏が292万票を獲得し、3回目の当選を果たしました。安倍政権下の前回選では国政与党の自民党とのすれ違いが目立ち、一時は自民党が独自候補の擁立を模索する動きもありましたが、今回の選挙では自民・公明両党が小池氏を支援し、50名以上の候補者が乱立した同選挙を制しました。
小池氏が3選を果たした要因の1つとして、実は岸田政権が昨年11月に策定した「資産運用立国実現プラン」の目玉施策の1つである「金融・資産運用特区」計画を推進し、自民・公明両党との距離を縮めたことが挙げられます。
この金融・資産運用特区には、すでに東京都を含む全国4都市が指定されることが決まっていますが、金融業界では、実質的な「金融都市」としての機能は東京1カ所に集中するとの観測もあります。
「金融資産運用特区」とは何か
そもそも「金融・資産運用特区」とは一体何でしょうか。金融・資産運用特区とは、特定の対象地域において、海外資産運用会社を中心とした国内外の金融・資産運用事業者の集積地を設ける取り組みです。
政府がこの特区創設を打ち出した背景には、2つの政策課題があります。
1つは、預貯金に偏り気味の家計資産を投資に回す、いわゆる「貯蓄から投資へ」の流れの促進です。わが国の家計金融資産2,141兆円(2023年12月末時点)の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、さらなる投資や消費につなげ、「成長と分配の好循環」を実現していくことを目指します。
もう1つは、スタートアップ分野やサステナビリティ分野を含む国内事業者への成長資金供給です。新しい資本主義実現会議が2021年に策定した「スタートアップ育成5カ年計画」では、スタートアップ投資額を2027年度に計画策定時点の10倍(10兆円規模)に拡大するとの目標を掲げました。
これらの政策課題に対応するため、政府は2023年12月13日に「資産運用立国実現プラン」を発表。資産運用業の改革やアセットオーナーシップの改革などの取り組みを進めていく方針を打ち出しています。
「立国実現プラン」では資産運用業改革の一環として、資産運用業への国内外からの新規参入と競争の促進に取り組むことが1つの柱として掲げられ、金融・資産運用特区はその主要施策の1つとして位置づけられています。
国が2024年6月に発表した「金融・資産運用特区実現パッケージ」によれば、特区では、従前国が進めてきた金融行政の英語対応の拡充、高度金融人材に係る在留資格の利便性向上などビジネス・生活環境の整備施策を強化・拡充していくと同時に、意欲ある自治体と協働で(1)国内外の金融・資産運用業者の集積、(2)金融・資産運用業者等による地域の成長産業の育成支援、(3)成長産業自体の振興・育成、といった観点から金融・資産運用ビジネス支援の取り組みを進めていく、としています。
その際、地域を限定して実証的に措置していくことが適当な規制改革事項については、国家戦略特区制度の枠組みも活用する方針を掲げています。
4地域、東京・大阪・福岡・北海道のコンセプト
この金融・資産運用特区について、金融庁では2024年1月から2月にかけて、対象地域となることを希望する自治体に提案募集を実施し、対象地域の検討を進めてきました。その結果、以下の4地域から提案・応募があり、いずれも対象地域として決定されています。各提案を見比べてみると、東京以外の3都市については、海外運用業者の招致を掲げつつも、どちらかといえば地域内企業への資金供給の方に重きを置いていることが見て取れます。各都市が資金を呼び込もうとしているのは、GXや半導体関連、スタートアップ支援など、国の政策とも親和性の高い領域が中心となっています。
おおざっぱに見れば、東京の「金融都市」が海外からの資金の入り口となり、東京を含む各都市における重点領域の地域企業にリスクマネーを分配するという、政府の特区計画の全体像が浮かび上がります。
では、東京都の金融・資産運用特区の提案内容について、詳しく見てみましょう。 【次ページ】東京都の金融・資産運用特区の提案内容とは
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