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- 2024/08/15 掲載
米CPI鈍化で利下げは…? それでも金融大手CEOらが「景気後退はない」と断言のワケ
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
円高が世界的「緊急事態」の引き金に?
米雇用統計では、8月2日発表の7月の失業率が4カ月連続上昇の4.3%を記録した。「過去12カ月の失業率における最低値からの3カ月移動平均上昇分が0.5ポイントを上回ると景気後退に突入する」というサーム・ルールの目安を上回り、上昇分が0.53ポイントとなった。この雇用環境の悪化が、米連邦準備理事会(FRB)による早急な利下げを市場に意識させた。
それにより、利上げに向かう日本の動きと併せて、多くの投資家が「日米金利差が縮小する」と判断。低金利の円を売って高金利のドルを買うキャリートレードが解消に向かい、ゆえに円相場が上昇、大幅な円安で押し上げられていた日本株が8月5日に全面安となり(ブラックマンデー株安)、それが世界に波及した、と一般的に理解されている。
さらに、米ウォール・ストリート・ジャーナルも8月8日付の論評で、「円相場の急上昇は世界的緊急事態の引き金になり得る」と警鐘を鳴らした。
米雇用情勢の悪化が、円高とそれに伴う日本国内の信用引き締めを呼び、米国、ひいては世界の景気をも冷やすという悪循環の可能性が議論されている。その半面で、景気後退を否定する声も市場関係者の間では大きい。
まずは、悪循環の可能性を指摘する根拠について、(1)失業率の上昇、(2)住宅費の高止まり、(3)消費の失速という3つの裏付けデータからひも解いていこう。
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