- 会員限定
- 2024/10/02 掲載
「ハリス優勢」とはまだ言い難いワケ…ブランド競争に見る、トランプの知られざる強み
大統領選の投票の「決め手」となるものとは
大統領選は「ブランド競争」である。コトラーによるとブランドとは、「個別の売り手もしくは売り手集団の商品やサービスを識別させ、競合他社の商品やサービスから差別化するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもの」のこと。政治マーケティングのブランドとは、候補や政策内容について顧客が抱くイメージや連想である。候補や政策がもつ「ブランド力」は、知名度、人気、好感度などの「ブランド地位(stature)」に加えて、それぞれの顧客が感じる「ほかの選択肢との明確な違い」や「自分にとっての大事さ(レリバンス)」、感情面の結びつきや心理的距離をあらわす「ブランド強度(strength)」の2つがある。
投票の決め手になるのは、実はブランドの強さのほうである。大統領選は二者択一、1つしか選べない。人気よりも「自分事」になるかどうか、親近感や共感の感情、心理的距離の近さが、支援意欲や投票、忠誠的な支持につながる。
政治のブランド競争は、「人(パーソナル)」と「サービス・機能(政策)」と「価値観(政権理念やビジョン)」の三つの次元で競う。どんな人物か、何をする(した)のか、将来像を含めて中核となる理念や価値観は何か。ブランド戦略の基本は、この3次元で有権者市場の認知と共感を作り出すことにある。表は、両者の現地点でのブランド力を比較している(表1:ブランド比較表)。
ハリスはテイラーなどメガインフルエンサーの支持を得たが…
「パーソナルブランド」では、生い立ちや人格、業績が問われるが、全米に知られたトランプに対し、ハリスはよく知られていない。だからハリス討論戦略の焦点は、パーソナル次元のブランド構築にあった。懸命に働く移民の中流家庭で育ち、検察官・州司法長官として女性の権利と自立のために闘った経歴を強調し、法と正義の擁護者として、6件の刑事訴訟被告であるトランプを「民主主義の脅威」と言い切った。またトランプの渋面と対照的に、微笑を崩さず常に冷静に対応した。
ニューヨークタイムズ(NYT)等が討論後に実施した世論調査によると、ハリスの知性や大統領としての有能さは認知されるようになった。討論直後には、テイラー・スウィフトやテレビ司会者オプラ・ウィンフリーなど全米で人気の女性メガインフルエンサーの支持表明もあり、人工妊娠中絶の権利を重視する女性層には訴求したかもしれない。
しかしバイデン時代に支持が減った黒人やラテン系、バイデン・トランプ共に嫌った全米2割の「ダブルヘイター」が、どこまでハリスとの距離感を縮めたかは疑わしい。
一方トランプのパーソナルブランドはすでに定着している。しかもトランプのブランド力は2016年選挙から一貫して、このパーソナルブランドの強さが支えている。
関連コンテンツ
PR
PR
PR