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- 2025/05/14 掲載
矢野経済研究所が解説、銀行・保険・証券会社の「生成AI活用」最新事情と成功の条件
2015年に矢野経済研究所に入社後、生命保険領域のInsurTechやCVCを含めたスタートアップの動向やブロックチェーンや量子コンピュータなどの先端技術、車載ソフトウェアに関する市場調査、分析業務を担当。また、調査・分析業務だけでなく、事業強化に向けた支援や新商品開発支援、新規事業支援などのコンサルティング業務も手がけている。
金融機関において生成AIを活用する際のポイント
生成AIについて明確な定義はないものの、学習したデータからさまざまなコンテンツを生成できるAIといった点は、共通認識としてあろう。生成AIは、AI領域の1つである機械学習に含まれる。大量のデータを学習する点は従来のAIと同様であるものの、従来のAIと異なる点として、学習したデータをベースに新しいコンテンツを生成できる点が挙げられる。
生成できるコンテンツは、テキスト生成やコード生成、画像・動画生成、音楽生成など多岐にわたる。ただし、生成AIは学習データをベースにコンテンツを生成するため、万能ではなく利用目的などに応じて利用者側でのチェックや修正などが必要となる。
さまざまな事業者が生成AIを日々の業務やサービスに取り入れるなか、金融機関も例外ではない。ただし、金融機関の場合には規制業種として各種業法や金融庁の監督指針などが存在しており、活用に際してより一層慎重を期する必要がある。
そうしたなか、金融機関における生成AIの活用について、一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)のなかにある生成AIワーキンググループにおいて「金融生成AIガイドライン」をまとめている。
同ガイドラインでは、生成AIに関する一般的な知見やリスクの解説に加えて、考慮すべきAI原則や法規制に関する解説のほか、生成AIに関するライフサイクルを企画~開発~提供~運用の4ステップに分けたうえで、留意すべき点や理由などについて言及している。
また、金融機関における活用事例を挙げた上で、効果とリスクを分かりやすく解説している。網羅的にまとめており、今回、焦点を当てた保険にとどまらず、銀行や証券など金融業界において生成AIの活用を推進していく上で必携といえよう。
金融生成A活用「3つのレベル」
ガイドラインでは、生成AI活用について3つのレベルを示している。まずレベル1は「社内でChatGPTなどの生成AIを個々人が利用する」状況を指す。「アイデアの壁打ち」「文面の修正」など、個々の従業員が自らの業務効率化や生産性向上を目的として活用する状況のことである。たとえば人事考課などで、上司が部下との面談を始める際の会話のきっかけを生成AIにアドバイスをもらうといったようなケースだ。
続くレベル2では、「RAG(検索拡張生成)の仕組みで社内情報を取り込み、特定分野のアプリケーションを構築する」状況である。レベル1では個々人がバラバラで利用していたが、レベル2では組織として取り組む状況へと大きく進化している。
具体的には「顧客からの問合わせ回答案の作成」「稟議書などの案作成」などがある。また、営業活動において顧客情報の収集や商談に向けた各種準備、営業後の報告書の作成などもレベル2に該当する。
そして、最後のレベル3が「社外の顧客に生成AIを使ったサービス提供」である。レベル1や2は社内であったが、レベル3は社外へとカバー範囲を広げている。典型例は顧客向けの問い合わせ対応、いわゆる生成AIを組み込んだチャットボットなどが当たる。
矢野経済研究所が生損保会社に以前にヒアリングをした際には、レベル2に該当するユースケースも耳に入っている。レベル3は誤った情報を提供することに伴う裁判リスクなど、さまざまなリスクが出てくるため、レベル2と3の間には非常に大きなハードルが存在するといえよう。
なお、後述するように、保険会社の多くは、全社的なデータ基盤を持つのではなく、事業部ごとにデータベースを保有、管理しているケースが多いことから、筆者はレベル2の中でも、事業部ごとに利用するレベルと、全社横断的に利用するレベルの2つに大きく区分をしてもよいのではないかとみる。
金融業界における3つのレベル | ||
レベル | 対象範囲 | ユースケース |
■レベル1 社内でChatGPTなどの生成AIを個々人が利用する |
従業員個人 |
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■レベル2 RAGの仕組みで社内情報を取り込み、特定分野のアプリケーションを構築する |
組織内 |
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■レベル3 社外の顧客に生成AIを使ったサービス提供 |
社外 |
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