- 2025/05/15 掲載
3メガの最高デジタル責任者が語る「DX&AI戦略」、その現状と展望とは?
鉄腕アトムはクラウドにつながっていたか?
ベイカレントの執行役員、和田安有夢氏は生成AI市場の年平均成長率について、日本が47.2%に上り、米国(36.3%)、中国(31.1%)を大幅に上回るとの見通しを紹介。AIの自律化(エージェント化)の流れに触れ、「AI自体が試行錯誤し、課題解決までしてくれるようになり、ある意味では人間の博士レベルの知能で24時間サポートしてくれる上、我々の意識しないところで、AI同士でネゴシエーションしてくれるといった世界が、5年後ないしは10年後に到来するという話もある」と述べました。
三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO の磯和啓雄氏は、自動運転の分野で、センサーを多用する米国とデータ共有を重視する中国との制度設計の違いを例に取り、「生成AIもこれと同じで、どのような制度設計でエージェンティック(自律)化するかを真面目に考えないといけない。外からのデータをどんどん食わせるのか、自分のデータをパーソナライズしていくのかといった設計思想は個社別にも違うので、そこが大きな課題だろう」と指摘しました。

執行役専務 グループCDIO
磯和 啓雄氏
みずほフィナンシャルグループ執行役常務 グループCHRO兼グループCDOの上ノ山信宏氏は、LLM(大規模言語モデル)の開発の分野で、日本が先行する米中に遅れを取っている現状を指摘。
そのうえで、「一定の性能確保できるようになってくると、アプリケーションレイヤーでの勝負になってくる」と説明。「そこではいろんなものを組み合わせたり、チューニングしたりといった世界であり、エージェンティックの世界でも『すり合わせ』みたいなものが大事になってくる。これは実は、私たちの得意とするところではないかと、結構明るい未来を僕は展望している」と述べました。

執行役 グループCHRO兼グループCDO
上ノ山 信宏氏
三菱UFJフィナンシャル・グループ 執行役常務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTOの山本忠司氏も「米国や中国が先行するLLMの世界では、なかなか太刀打ちできない状況になっている」としたうえで、「もともと『鉄腕アトム』などAIの入った機械が身近にあったはずの日本がなぜか出遅れてる中、どこで存在感を示せるのかというと、やっぱりSLM(小規模言語モデル)ではないかと思う」と指摘。
「電力がかからず、計算資源の制約が少ないので、日本に向いているのではないか。今、クラウドに繋がずデバイス上で処理するエッジAIもニーズが高まっているので、日本にまだ若干の勝ち筋がある。鉄腕アトムもあれだけ判断が速いから、クラウドではなく、たぶんエッジAIではないかと思う(笑)」と述べました。
SMFG、500億円のAI予算枠を新設
SMFGは以前から、磯和氏を中心にした「CDIOミーティング」を毎月実施し、デジタル関連の投資を推進してきました。磯和氏は「僕が真ん中にいて、社長と頭取がいて、僕に3年間で300億円くらいの予算がついている。ガチの根回し無しで、入行2年目の営業のお兄さんでも、ピッチをしに来て、面白ければ『これに予算をつけよう』というのをずっとやっている。デジタル子会社を10社ほどつくったが、これは全てCDIOミーティングから始まっている」と説明します。さらに2024年秋には、このCDIO予算とは別に、生成AIに特化した投資枠500億円分(次期中計末まで)を設定しました。

磯和氏は「各部門で予算をつけると投資収益率(ROI)で管理しがちなので、生成AIの新ビジネスの優先順位がなかなか上がらなかった。自分の部門の予算を使わなくてもよいとなると、バーッと(アイデアが)出てきて、今では生成AIまつりのようになっている」と、予算枠新設の意義とその手ごたえを語りました。
足元では、顧客向け新規サービスの創出にも注力。すでにシンガポールで先行リリースした「CFOダッシュボード」は、AIによって財務データを可視化、分析し、顧客企業の資金管理の最適化を支援するといいます。
また、社内においても全行員向け汎用チャットボット「SMBC-GAI」を展開済み。オペレーターの回答案を生成するコールセンター業務向けシステムも検証が完了しており、融資稟議のドラフト作成の活用についても開発中と説明しました。 【次ページ】みずほ、新年度に5つの重点領域で投資拡大へ
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