- 2025/05/21 掲載
松尾研究所が示す「生成AIの進展と最新状況」、成長の鍵を握る「2つの技術的要因」
東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻修了。2020年より、松尾研究所に参画し、機械学習の社会実装プロジェクトの企画からPoC、開発を一貫して担当。その後、社内外の特命プロジェクトを推進する経営戦略本部を立ち上げ・統括。また、AI・知能化技術の応用により成長の見込めるベンチャー企業への投資に特化したVCファンドを新設し、代表取締役を務める。松尾研究所の参画以前は、シティグループ証券株式会社にて、日本国債・金利デリバティブのトレーディング業務に従事。
なぜ生成AIの進展は止まらない?
生成AIの進展が止まらない。生成AIの代表格OpenAI o1[2]、DeepSeek-R1[3]が2025年の東京大学の二次試験に挑戦し大きな成果を成し遂げた。最難関とされる理科III類の合格最低点を上回り、合格水準に達する結果となった[1]。回答時間も1教科あたり約2~60分と試験時間を大きく下回る。東京大学の入学試験において、生成AIは人間を凌駕するということが明らかになったのだ。大学受験を例に挙げたが、多くの知的活動の分野において生成AIは同様に高い成果を出し、その性能は向上し続けている。もはや生成AIが人間の知的能力を超える技術となることに疑いの余地は少ないだろう。
生成AIは、2022年11月に公開されたChatGPTを皮切りに加速度的に進展しており、創造的タスクにおいて人間の能力に匹敵、あるいは凌駕する性能を実現するに至っている。その代表的なものに大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)による自然言語処理や、拡散モデルを用いた画像生成がある。LLMは、文章生成、翻訳、コードの自動生成など多岐にわたるタスクで高い性能を発揮している。さらに、画像や音声を統合的に処理するマルチモーダルAIや、自律的に課題解決を行うAIエージェントといった新たな技術も生まれている。
これらの生成AIは金融領域の業務効率化、医療診断支援、製造プロセスの最適化など、幅広い業務において新たな価値創造の可能性を示している。
生成AIの進展と最新状況、技術革新とAIエージェントの進化
基盤モデルの進化生成AI、特にLLMは、2022年以降、急速な進化を遂げている。ChatGPTの登場から約2年の間に、米国企業を中心にGPT-4、Claude[4]、Gemini[5]、Llama3[6]といった高性能モデルが次々とリリースされ、その能力は着実に向上している。特筆すべきは、これらのモデルが単なる言語処理にとどまらず、以下の特徴を持つ統合的なシステムへと進化している点である:
- マルチモーダル化:GPT-4o、Gemini等による画像・音声・テキストの統合的処理
- 推論能力の向上:数学的問題解決や論理的思考における性能向上
- 領域特化LLM:医療、金融、コード生成等さまざまな領域に特化したLLMの開発
- AIエージェント化:AutoGPT[7]等自律的なタスク実行と意思決定が可能なシステムの実現
さて、2025年に世の中を驚かせたのは、中国のAIスタートアップであるディープシーク(DeepSeek)の台頭だ。同社は2023年に設立され、同年に最初の大規模言語モデル(LLM)をリリースしているが、特に衝撃を与えたのが、2025年1月にリリースされたDeepSeek-R1モデルである。
他のオープンソースモデルの性能を凌駕するだけではなく、OpenAI社が提供する高性能なモデルであるOpenAI o1にも匹敵する性能を、約1/10程度の開発費で達成したと言われている。
DeepSeekの成功は、限られたリソースで高性能なAIモデルを開発できることを示しており、AI開発のパラダイムが変わる可能性を提示している。
さらに同社のオープンソース戦略は、エンジニアやスタートアップが大手テック企業に依存せず独自に高度なAIモデルを構築・展開できる可能性も示唆しており、今後は基盤モデルの構築がコモディティ化する可能性も否定できない。実際に中国では、すでに百以上の企業、自治体へDeepSeek製のモデルの導入が進んでいると聞く。
AIエージェントの進化
このように、基盤モデルの進化が著しい一方で、基盤モデルを活用したアプリケーションにおいても近年進化が見られる。その1つとして、AIが人間に代わってPCやスマホ作業を自律的に遂行する「AIエージェント」が挙げられる。
AIエージェントは、特定の目的や課題を与えられた際に、自律的にタスクを計画・実行し、必要に応じて情報収集や意思決定・行動を行うシステムである(なお、厳密なアカデミックな定義はない)。
これは従来の生成AIシステムが特定の指示に基づき単発の応答や情報処理を行う性質から、より自律的かつ能動的な行動を伴う「エージェント」へと進化したことを意味する。
現在もさまざまなAIエージェントが開発されているが、この分野においても中国のスタートアップ企業モニカ(Monica)が提供するManusが話題となっている。
Manusは、ユーザーの指示を受けて自律的にタスクを実行することができ、たとえば外部ツールの自動操作(ブラウザの自動操作、Excelでの表・グラフ作成、コードエディターでのプログラム実行など)も可能である。これにより、分析やサイトの構築など、従来人手が必要だった知的労働も大幅に代替される未来が訪れようとしている。
筆者の個人的な見解ではあるが、2025年に入り、基盤モデルにおいてもAIエージェントにおいても中国企業の躍進が著しい点は特に注目に値すると考える。
【次ページ】生成AI市場はなぜ成長する?鍵を握る「2つの技術的要因」
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