• 2025/10/20 掲載

生成AIの「個人利用の企業」vs「組織利用の企業」…これから始まる“絶望的”格差

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

2
会員(無料)になると、いいね!でマイページに保存できます。
これまでの生成AIは、個人利用にとどまっていた。だが生成AIの真の潜在力は、「知の再構造化」にある。つまり、企業などが組織全体で生成AIを利用し、集合知を形成することで、知的生産性を飛躍的に向上させることができるということだ。個人利用とは異次元の可能性を切り開くものであり、この集合知形成の能力が企業価値を大きく左右する時代となる。そのためには、企業は何をすべきなのか。
執筆:野口 悠紀雄

野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

★本連載が書籍化されました★
『どうすれば日本経済は復活できるのか』 著者:野口悠紀雄
購入サイトはこちら:https://www.sbcr.jp/product/4815610104/

photo
組織で生成AIの効果を最大限に発揮させるには?
(Photo/Shutterstock.com)

依然として「個人利用」にとどまっている

 ChatGPTなどの生成AIが社会に広まり始めてから、すでに数年が経過した。現在では、文章の校正や要約、資料作成、ブレインストーミング、さらには顧客対応文書の下書きなど、業務のあらゆる場面で生成AIが活用されている。

 ただし多くの場合、生成AIの利用は、個人が自分の職務範囲内で独立して行う「個人ユース」にとどまっている。企業や行政機関などの組織体でも生成AIの導入は進んでいるが、基本的な構造は変わらない。

 たしかに、組織の業務データベースと連携することで、個人では利用できない情報を基にAIが応答する事例は増えている。

 しかし依然として、「個別がAIを使う」というスタイルが主流である。部門間・人材間の知見が、AIを通じて自動的に統合されるような仕組みには至っていない。

 もし生成AIが「組織の集合知形成」の触媒として設計されれば、個人利用とは異なる新たな可能性を切り拓くことができるだろう。多様な人間の経験や知識がAIを通じて継続的に統合され、対話・分析・発見が繰り返されることによって、組織全体としての「知的生産性」が飛躍的に向上する可能性がある。

組織利用で形成される「集合知」の重要性

 ここで重要なのが「集合知」という概念だ。集合知とは、単なる「多くの人の意見を集めたもの」ではない。集められた多様な知識や経験が相互に関連付けられ、適切なフィルターと統合メカニズムを通じて、新たな知見や洞察が創出されるプロセスが集合知の核心である。Wikipediaやオープンソース開発などにおいては、一定のルールの下で参加者の貢献が累積され、質の高いアウトプットが得られている。

 組織の中でも、複数部署の知見が集約されて新規事業の方向性が決まったり、複数の営業現場からのフィードバックが製品改良に生かされたりするケースが増えている。

 生成AIを中核に据えた情報集約・要約・提案システムによって、こうしたプロセスをより構造的なものに進化させることが可能となるだろう。 【次ページ】国富論でわかる、「知的生産性が爆増する」理由
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます