- 2026/02/02 掲載
プルデンシャル生命「30億円不正の構造」、“営業力神話化の病理” から何を学ぶか?(2/3)
想像以上に広がっていた不正の実態とは?
2026年1月16日に発表された報告内容において判明した主な事実は以下の通りである。(1)多数の(元)社員による不適切・違法行為
報告書では、2024年8月以降の「お客さま確認」で複数の不適切な事案が判明したと記載されており、その規模感・内容は極めて深刻である。
記載された内容と被害件数は下記の通りであるが、組織全体で複数の不正が横行し、単発事案ではない構造的な問題であった実態が明らかになった。
- 制度に関連する不適切行為(詐取など)は、関与者3名、被害者8名で、被害総額は6,000万円超
- それ以外の金銭不適切行為では 106名が関与し、約30億円超が受領されていた
- 不正は在職中も退職後も発生しており、合計498名の顧客が被害に遭った可能性
(2)不正の手口
今回明らかになった詐取の手口は、きわめて悪質である一方、かなり「原始的」なものである。
- 架空の投資話: 「社員しか買えない、元本保証で高利回りの特別な社債や株式がある」と顧客に持ちかけ、個人の口座に現金を振り込ませる
- 保険料の着服: 「前納すれば安くなる」と偽り、保険料名目で現金を受け取り、着服
- 私的な借金: 顧客との信頼関係を悪用し、「一時的に立て替えてほしい」と金銭を借り入れ、返済しない
- 手書き領収書の発行: 会社公認ではない、市販の領収書や手書きのメモを渡し、会社に入金されたかのように装う
(3)ガバナンス・管理体制の構造的欠陥
不正はなぜ発生し、なぜ長期間見逃されたのか。報告書の内容をもとに、その原因と本質的な課題を整理すると、次の点に集約される。
- 営業管理職における現場モニタリングが不十分で、社員の行動管理が機能していなかった
- 個々の不正が長期化していたにもかかわらず、早期発見できなかった管理態勢の弱さ
リスク管理・コンプライアンスの弱さ
- 報告書では、現場・管理部門・内部監査からなる「3線管理態勢の不十分さ」が記載されているものの、実務上の整備が伴っていない実態が明らかになっている
- 経営陣(取締役会・経営企画など)が、ビジネスモデルに内在するリスクを十分に検証していなかった
「ビジネスモデルの絶対視」という文化的要因
報告書は、ビジネスモデルや営業社員への強い信頼に基づいた組織風土の課題をあげている。
- フルコミッション(完全歩合)制の営業社員を「最重要資産」として扱いすぎた結果生じた、自己管理と外部チェックの空洞化
- 営業部署への過度な裁量付与と評価軸の偏重が、利益重視・短期成果志向を助長
- 他の報道による過去の訴訟・投資トラブルでも指摘されているように、単発の不祥事ではなく、文化として抱えていた課題と評価される
なぜ止められなかった?営業力を神話化した組織の病理
報告書内で「営業制度の課題」とされているが、実際にはそれをさらに掘り下げると、「文化・構造的要因」が単なる制度的な欠陥以上に深刻である点がみえてくる- 報酬・評価制度が営業成果重視に偏重し、顧客本位行動を阻害していた可能性がある
- 収入の不安定さが、顧客からの借入行為や不正行動につながった事例も報告されている
- 多数の不正が営業現場から発生している点から、教育・倫理意識の欠如が大きな背景にある。
「再発防止」は機能するのか、対策と現実のギャップ
報告書では「再発防止策の実行」が強調されているが、実質的な改善策の内容は限定的である。特に報告徴求命令を出した規制当局の視点からみると以下が指摘されそうである。- 「なぜ不正を検知できなかったのか」という因果関係の分析が抽象的であるため、本質的な改善を必要とするポイントが不明確である。
- 施策の多くが方針レベルにとどまり、期限・責任者・KPIといった実行管理の枠組みが明確でない。
- 退職者による顧客接触や情報悪用といった、顕在化したリスクへの対応が十分に制度化されているとは言い難い。
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